【2月15日 AFP】農作業中に除草剤を吸入したために健康を害したとして、米バイオテクノロジー企業大手モンサント(Monsanto)を相手取り、フランスの農業従事者が2004年に損害賠償を求めた裁判で、仏リヨン(Lyon)地裁は13日、原告の主張を認め、賠償請求を認める判決を下した。世界的な影響を与える可能性のある判決となった。

 判決は「モンサントのラッソー乳剤(除草剤)を吸引した原告ポール・フランソワ(Paul Francois)氏(47)の健康被害について、モンサントには責任があり、損害賠償を全額支払う必要がある」とした。

 原告の弁護士フランソワ・ラフォルグ(Francois Lafforgue)氏は「この判決は、各国の農業従事者に関わるものだ」と述べた。

 穀物農家を営むフランソワ氏は2004年、モンサント製の除草剤を使用した際に誤って吸引してしまい、吐き気、吃音、めまい、頭痛、筋肉痛などの症状が表れ、以降1年間は仕事に復帰できなかった。

 カナダ、英国、ベルギーではすでに使用が禁止されていた2007年まで、フランスではラッソー乳剤が市場に出回っていた。この点についてもモンサントは指摘・非難されている。

 モンサントはまた、有害物質の含有および吸引した際の人体へのリスク、さらにはマスクの着用といった防護策についても、ラベルへの記載を怠っていたとされる。

 モンサント側の弁護士ジャン・フィリップ・デルサール(Jean-Philippe Delsart)氏は、原告の訴える症状が除草剤の使用から時間が経過した後に表れたことから、関連については証拠がないと反論した。

 上訴についてモンサントは、現時点で未定としている。
 
 大量に使用されている農薬について反対を訴えるフランスの消費者団体「ジェネラシオン・フュチュール(Generations Futures、未来世代を守る運動)」は今回の判決を歓迎している。

 同団体の広報は「この問題において、モンサントの責任が認識されることが重要だ。農薬関連企業は今後、責任逃れが不可能になったことを分かっただろう」と述べた。また「全ての農業従事者と全ての農薬による犠牲者にとって重要な一歩。彼らの体をむしばむ病理の苦しみに対してモンサントは責任を問われ、損害賠償が支払われる」と続けた。

 農民運動と反グローバリゼーション運動の活動家として知られる、欧州議会のジョゼ・ボベ(Jose Bove)議員は、フランスの農薬認可制度を改革することが必要だと述べた。ボベ議員はAFPに対し、「ラッソー乳剤は1980年代に危険と分類された…しかし、2007年になってようやくその販売が禁止されたことからも分かるように、認可制度を全体的に作り直す必要がある」と語った。(c)AFP