【2月13日 AFP】欧州各地で11日、欧州連合(EU)27か国と他10か国で交渉を進めている「偽造品の取引の防止に関する協定(Anti-Counterfeiting Trade AgreementACTA)」はインターネットの自由を損なうと抗議する大規模デモが行われた。

■プライバシーや言論の自由への懸念を主張

 ACTAは、知的財産権保護の国際標準の強化を目的に2011年に東京で調印された。その対象の一例に、医薬品など様々な製品の模造品・海賊版対策がある。しかし、違法ダウンロードやオンライン・ファイル共有に対する規制や取り締まりを導入しようという試みは、インターネットの自由を侵害するものだという批判が起こっている。

 ACTAは現在、数か国の批准を待っている状態だが、一部のインターネット・ユーザーからは強硬な反対が生じており、そのためにポーランド、チェコ共和国、スロバキアなどは批准プロセスを凍結している。

 11日のデモはミュンヘン(Munich)で1万6000人、ベルリン(Berlin)で1万人など、全国で約4万1000人が参加したドイツを始め、パリ(Paris)やウィーン(Vienna)、東欧諸国の首都を含む10都市以上で行われ、氷点下という厳寒の気温の中、若者を中心とする数万人が横断幕を掲げたり、ハッカー集団のシンボルであるガイ・フォークス(Guy Fawkes)の仮面をつけたりして行進した。

 チェコの「海賊党(Czech Pirate Party)」のMikuláš Ferjenčík副党首は「批准プロセスが停止していることは勝利だと思っているが、目標はACTAを完全に止めることだ」と述べた。

■決定プロセスや不透明性にも批判

 エストニアの首都タリン(Tallinn)では約1500人のデモの中に、アンドルス・アンシプ(Andrus Ansip)首相の改革党と連立与党を組む党の議員もいた。その1人、ユック・カレ・ライド(Juku-Kalle Raid)議員は「アンシプ内閣は、エストニアの政府決定がどこか隠れた密室で行われていることを示している。ACTAもまた国民との議論なしに決定されたものだ」と矛先を政権批判へと広げた。
 
 リトアニアの首都ビリニュス(Vilnius)のデモの主催者の1人、Mantas Kondratavicius(21)さんはAFPの取材に答え「(ACTAの)条項の中には、曖昧すぎていろいろな解釈ができてしまうものがある。もしもACTAが承認されれば、人権やプライバシーについての理解が変わり、後へは引き戻せなくなるだろう。著者が何らかの支払いを受けるということには異論はないけれど、そのためにプライバシーや言論の自由が犠牲にされることがあってはならない」と述べた。

 これに対し、欧州委員会(European Commission)は、ACTAは不透明との批判を交わすべく、交渉プロセスの詳細の記録を発表。「EUは(ATCTAが)一定の利害関係者のグループに情報への優先的アクセスを提供しているという見方は強く否定する。また協定には密かな合意などなく、最終版は欧州委員会のウェブサイトですべての市民が読めるよう公開されている」と主張している。

 EU外のACTA調印国は日本、韓国、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、メキシコ、モロッコ、スイス、米国。(c)AFP