【1月26日 AFP】人が生涯に心臓病を患うリスクはこれまで考えられてきたよりはるかに高い可能性があるとの論文が、25日の米医学誌「ニューイングランド医学ジャーナル(New England Journal of Medicine)」に発表された。

 心臓発作や脳卒中の発症リスクは、喫煙や糖尿病、高血圧、高コレステロールといった個々のリスク要因によって著しく増大するが、過去の研究の大半は因果関係の観察期間を5~10年に絞っているため、長期的に見ると非現実的な結果が示されていたという。

 主執筆者の米テキサス大学サウスウエスタン医学センター(University of Texas Southwestern Medical Center)のジャレット・ベリー(Jarett Berry)准教授(内科)は、「若年期と中年期に獲得したリスク要因が、心臓病の生涯リスクを決定する。短期間のリスクだけに注目する現在の心臓病予防は、特に40代と50代に誤った安心感を与えてしまう」と述べている。

■データで明らかになった生涯リスク

米国立心肺血液研究所(National Heart, Lung and Blood InstituteNHLBI)が出資した今回の研究では、リスク要因を測定する「Cardiovascular Lifetime Risk Pooling Project(心臓血管の生涯リスクデータ蓄積プロジェクト)」に参加した全米の45歳、55歳、65歳、75歳の白人および黒人の男女25万4000人のデータを精査した。

 その結果、リスク要因が複数ある人が生涯に心臓病を発症する確率は、リスク要因が全くない人の10倍だった。  例えば、生涯に心臓発作か脳卒中を患う確率は、45歳の健康な男性で1.4%だったのに対し、リスク要因が複数ある同年齢の男性では49.5%だった。女性の場合は、45歳の健康な人では4.1%、リスク要因が複数ある同年齢の女性では30.7%だった。

 調査を主導したノースウエスタン大学フェインバーグ医学部(Northwestern University Feinberg School of Medicine)のドナルド・ロイドジョーンズ(Donald Lloyd-Jones)准教授(予防医学)によると、長期的に見た場合、「リスク要因が1つだけでも、生涯に重大な心血管系症状を発症して死に至るか、生活の質や健康を大きく損なう結果を招く確率が非常に高くなる」という。

 ただ逆に、中年期にリスク要因が最も少ない状態を維持できた場合には、残りの生涯に目覚ましい好影響が及ぶことも分かったという。リスク要因が最も少ない状態とは、喫煙せず、糖尿病がなく、総コレステロール値が1デシリットル当たり180ミリグラム以下、平常時の最高血圧120以下、最低血圧80以下の状態を言う。(c)AFP