【12月22日 MODE PRESS】ファッションデザイナーの鳥居ユキ(Yuki Torii)が今年、デビュー50周年を迎えた。10月にTOKYO DOME CITY HALLで開催された通算100回目となるファッションショー「50th Milestone」は、縁の深い多くの著名人やメディア関係者らをはじめ、全国から集まった大勢の顧客たちによって広い会場が余すところなく埋め尽くされた。

 今回は、デザイナーの鳥居ユキにこれまでのデザイナー人生を振り返ってもらいながら、自身が考えるファッションとは、そして若いデザイナーたちに伝えたいことなどを聞いた。

-デビュー50周年記念ショーが終わった感想は?

 今年は50周年を記念し、通常のプレタポルテに加え、スペシャルゲストを迎えたオートクチュールのショーを行った。クチュールのドレスは、ゲストひとりひとりにあわせて特別にデザインしたもの。みんながとても喜んでくれて、嬉しかった。50周年は、決してひとりでは成し遂げられないもの。長年にわたりブランドを支えてくれたスタッフやお客様への感謝の気持ちでいっぱいです。ショー当日は本当 に、会場全体がハッピーな空気で包まれていた。スペシャルゲストも「お客さんが嬉しそうだったのでとても楽しくできたわ」といってくれていたし・・・出演した加賀まり子からも、ショーのあとに「温かな雰囲気でとても楽しかったわ」といわれた。人のハッピーな気持ちには、すごいパワーが秘められていることを改めて実感した日でもあったわね。

-50年間を振り返ってみて思うことは?

 あまり過去は振り返らないタイプの人間なので、あっという間の50年ね。いつもショーが終わると即座に「次は、もっとこうしたい」と、来シーズンのコレクションに意識がむくので…いつもそれの繰り返しなのよ。

-これまでのデザイナー人生で最も印象的だったことは?

 1975年にパリ・コレクションでデビューしたことかしら。日本で10数年キャリアを重ね、30代の初めにパリで初めてショーを行った。ファッションの本場に身を置き、その中で仕事をすることで、多くを肌で学んだし、大切なことを沢山吸収した。世界的な時代の流れの中に常に身をおくことができたといっていいわね。それが自分にとっての大きな転機だったと思う。

-50年間のなかで感じる一番大きな世の中の変化は?

 昔は人の目を気にし、置かれている環境や場にあわせて服を選ぶことが多かった。現代の人にとって、ファッションはひとつの喜び。自分なりの良さを追求し、服を選んでいる。自分の意思で、楽しんで服を選ぶ時代が来たことをとても嬉しく思う。

-メディアの在り方の変化は感じますか?

 メディアは大きく変化し、情報が即座に、グローバルに届くようになった。今では、わずか1分もかからずに世界中に情報が配信されるし、どこにいても、インターネットを通して見たいものを見ることができる時代になった。その影響で、パリで売れるも の、日本で売れるもの、中国で売れるものが同じになった。以前は国によって売れるものが違ったが、今は同じになってきた。どの国でも、共通して「自分らしさ」が求められているように感じる。

-自分の経験を元に、若いデザイナーに対して言えることは何?

 若い人にとって大切なことは、今自分が いる環境で、いかに吸収し、成長するかということ。どんな環境であっても、一日一日を大切にし、努力を重ねれば、チャンスが訪れたときにちゃんとそれを掴むことができる。「こういう環境じゃないとできない」ということは決して無い。日々を大切に努力すれば、また新たなチャンスにめぐり合うことができる。私の場合は、常に前を向いてきたら、今この場所にいた。一度も後ろを振り返らなかったからこそ、今があるのかもしれない。

-鳥居ユキにとってのファッションとは?

 常に時代の流れとともにあるもの。日々変化するものを掴むこと。それと同時に、温かさや優しさ、思いやりが基礎になければいけない。常にナチュラルに生きていきたいとおもっている。

-今後の目標は?

 目標は…実はなにも無いの。もう次 のスタートがはじまっているので、頭の中は秋冬コレクションでいっぱいだから。ファッションは途切れることがなく、ここまでやったから「終わり」というも のがない。日々その流れと私は戦っている。革を染め、靴の型を決めたり、コーディネートを考えたり…やることは山のようにある。ショーのフィッティン グをしているときに、既にもう次回のコレクションにとりかかっているしね。なかなかハードな仕事だと自分でも思う。ショーの翌日には、もうアトリエにいる。もともとタフなのかもしれないわね。

-なにがそこまで貴方を突き動かすのか?

 やはりものづくりがすきだから、それに尽きる。常に喜びと楽しみを感じながら仕事をしているの。もちろん困難なこともあるけれど、壁にぶつかってもすぐにそれを解決するための方法を探してきた。この50年、常にそれは変わらないし、これからもね。【岩田奈那】(c)MODE PRESS

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