【12月2日 AFP】パリのオートクチュール・ファッションを支える刺繍工房「メゾン・ルサージュ(MAISON LESAGE)」を長年にわたり率いてきたフランソワ・ルサージュ(Francois Lesage)氏が11月30日、ベルサイユの病院で死去した。82歳だった。

■真珠とグリッターに囲まれて

 フランス刺繍の第一人者として知られるルサージュ氏は、刺繍職人の父とファッション・カラリストの母親の間に生まれた。自らが生まれた環境に ついて「私は、真珠とグリッターの山の上で生まれたんだ」と冗談交じりで語っていた。「他の道に行くことは一度も無かった。今でも、自分が生まれたベッドルームで寝起きしている」とルサージュ氏。

 父から工房を引き継いだのは、弱冠20歳の時だった。それ以来、60年以上にわたりオートクチュール・ファッション界を巧みな技術で支えてきた。イヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)やカール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)をはじめ、ジャンポール・ゴルチエ(Jean Paul Gaultier)、クリスチャン・ラクロワ(Christian Lacroix)ら数多くのデザイナーたちが、ルサージュ氏に絶大な信頼を寄せていた。

■役目は“カメレオン”になること

 以前ルサージュ氏は、インタビューで「どのデザイナーも、スタートしたばかりの頃から知っています。私たちの役目は“カメレオン”になること。 カールと仕事をするときは、私自身がカールになりきります。クリスチャンとの仕事でも、同様です。デザイナーからスケッチを受け取りますが、それにどう解釈を加えるかは自分次第。ファッションデザイナーが建築家ならば、我々はインテリア・デザイナーなのです」と語っていた。

■カールも悲しみのコメント

 長年にわたり共に仕事をしてきたカールは、類まれな才能をもった芸術家の死を悼み、「この知らせに深い悲しみを覚えている。彼の才能には、何度も驚かされた」とコメント。工房側も「彼は情熱的を持ち、ユーモアに溢れ、人を引つける魅力を持った人物でした」と声明を発表した。(c)AFP

【関連情報】
情熱を胸に、金糸と向き合うフランスの職人
ルサージュの刺繍が光る「シャネル」メティエダール コレクション