【11月18日 AFP】東南極の厚さ3キロの氷河の下にあるガンブルツェフ山脈(Gamburtsev Mountains)の起源の謎を解明したとする論文が、16日の英科学誌ネイチャー(Nature)に発表された。

 全長1200キロ、いちばん高いもので2700メートルもあるのこぎりの歯のような峰々で構成され、深い渓谷が交差するように走っているガンブルツェフ山脈。この名前は、1958年に行われた第1回国際極年(International Polar Year)学術調査で山脈を発見した旧ソ連の地球物理学者の名前にちなんでいる。

 この山脈がどのように形成されたのかは南極大陸の最大の謎の1つで、半世紀以上にわたり議論が戦わされてきた。

 山脈は高地にあり、山脈を形成する地殻隆起とは長らく無縁な古い大陸にある。一方で、その鋭い峰々は、ヨーロッパアルプスのように、風や雪や水による浸食がほとんどない若い山脈であることを明確に示している。

 今回論文を発表した7か国の研究者から成るプロジェクトチームは、謎を解くカギは基部に点在する湖や地溝にあると考えた。東南極の地溝帯系は東アフリカの地溝帯系に極めて似ている。研究を率いた英南極調査所(British Antarctic SurveyBAS)のFausto Ferraccioli氏によると、東南極の地溝帯系には南極最大の氷底湖があることも明らかになっている。

 チームは、東南極の中央部の上空に、地中レーダーとセンサーを搭載した双発プロペラ機「ツインオッター(Twin Otter)」2機を飛ばし、地球の重力場と磁場の変化を記録。これを基に、氷底地形の地図を作製した。

■眠れる森の美女のように・・・

 論文によると、話は10億年前にさかのぼる。

 この時、複数の小さな大陸が衝突し合い、ゴンドワナ大陸(Gondwana)という巨大大陸を形成した。衝突地点はせり上がって岩山が出来た。

 岩山はやがて、自らの重みに耐えきれずに崩壊した。そして長い年月の間に浸食され、基部だけが、根っこのような形で残された。

 その後、今から約2億5000万年前と約1億年前の2回に分けて地殻が変動し、ゴンドワナ大陸が引き裂かれた。この時、今の東南極から海を隔てたインドまで、地殻に3000キロの亀裂が走った。そして、残された「根っこ」は地殻変動と相まって、陸地を押し上げ、これが東南極となった。

 なお、土地の隆起の際に、大規模な地溝帯系が発達した。この斜面は、川や氷河により削り取られていった。

 約3400万年前には、この山脈の上に、カナダほどの大きさの東南極の氷床が覆いかぶさった。山脈は『眠れる森の美女』のように、不気味な若さを保っている。(c)AFP