【11月10日 AFP】アフリカでは、地球温暖化でツェツェバエが南部にも生息域を広げるため、睡眠病患者が新たに数千万人増える恐れがあるとする研究結果が9日、英学術誌「Journal of the Royal Society Interface」に発表された。

 睡眠病(別名トリパノソーマ症)の原因となるトリパノソーマ原虫は、吸血性のツェツェバエにより家畜から人へ媒介される。適切な治療を受けないと、けいれんや深刻な睡眠障害を起こし、昏睡状態に陥って死に至る。

 世界保健機関(WHO)によると、現在、東アフリカ、中央アフリカ、西アフリカでの睡眠病発症例は年間7万件。睡眠病の危険にさらされているのは計7500万人にのぼる。

 米疾病対策センター(US Centers for Disease Control and PreventionCDC)のショーン・ムーア(Sean Moore)氏率いる研究チームは、国連(UN)の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が2007年に発表した世界平均気温の上昇に関する2つのシナリオ(今世紀末までに1.1~5.4度上昇)に沿って、コンピューターシミュレーションを行った。

 この時、東アフリカで最も一般的な種のトリパノソーマ原虫およびこれを媒介する2種のツェツェバエが気温上昇にどう反応するかを見た。

 その結果、平均気温が20.7~26.1度で睡眠病が発生しうることが分かった。東アフリカの一部地域ではツェツェバエが生存できないほどの高温になるが、現在はツェツェバエの生息にとって気温が低すぎる東アフリカの他地域や南部アフリカがツェツェバエの生息域になる可能性も明らかになった。

 研究は、睡眠病の危険にさらされる人口が2090年までに今よりも4000万~7700万人増えると結論付けている。(c)AFP