【11月4日 AFP】古代スカンディナビアの海洋民、すなわちバイキングたちは、太陽や星が雲に隠れると謎の石「サンストーン(太陽の石)」を使って航海を続けたという言い伝えがあるが、これは単なる伝説ではないと主張する研究が2日、発表された。

 今から1000年以上前、羅針盤などまだ発明されていなかった頃、バイキングたちは故郷のスカンディナビア地方からアイスランドやグリーンランドへ向かって進み、さらに何千キロをも航海し、クリストファー・コロンブス(Christopher Columbus)に数世紀先駆けて北米にも到達していた可能性が高い。

 恐れを知らないこの船乗りたちが、陸の目印や、潮流や波に関する深い知識を駆使し、太陽や星の位置を読み取りながら航海していた証拠はある。しかし、彼らがどのようにして、霧や雲に覆われやすい高緯度の北半球で長距離を旅することができたのかはこれまで謎のままだった。

 そこで語られてきたのが、「サンストーン」だ。

 長年、専門家たちは、水晶のかけらを使って厚い雲の上の太陽の位置をつかむ方法をバイキングたちが知っていたと論じてきたが、考古学者たちが確たる証拠を発見したことはなく、それが一体どんなものだったのかも疑わしいままだった。

 しかし今回、仏レンヌ大学(University of Rennes)のギー・ロパール(Guy Ropars)氏率いる国際研究チームが、実験的証拠と理論的証拠を集め、その答えを見つけたと発表した。

■正体は「アイスランドスパー」

 バイキングたちはカルサイト(方解石)、別名アイスランドスパー(氷州石)と呼ばれる透明な結晶を使い、太陽の方角を誤差1度以内という正確さで把握していたと、研究チームは主張している。この自然の結晶石には偏光を解消する働きがあるのだという。

 その仕組みはこうだ。もしもカルサイトの上部に点印をつけ、下からカルサイトを通してその印を眺めると、印はふたつあるように見える。「次に、ふたつの印の濃さや暗さがまったく同じに見えるところまで、結晶を回転させる。それらが同じになった角度の時、上を向いている面が太陽の方向を指している。薄明の状態でも誤差は2、3度という精度が得られる・・・バイキングたちは隠れた太陽の方向を正確に見極めることができただろう」(ロパール氏)

 ロパール氏によると、人間の目は微妙な明暗差も見分けることができるため、ふたつの点がまったくそっくりになる角度を見つけることができるのだという。

 また16世紀のイングランド女王、エリザベス1世(Queen Elizabeth I)が派遣して1592年に沈没し、最近になって発見された船から、カルサイトが見つかったことによっても、航海支援に水晶が利用できることをバイキングたちが知っていたという説は強化された。

■羅針盤発明後も予備で使用?

 研究では、羅針盤の時代になった後も、船乗りたちは予備としてこうした石を手持ちで使っていただろうと推測している。

   「われわれは実験で、同じ船から発見されたたった1門の大砲でも、摂動によって磁気コンパスの針が直角に振るほど乱れることを確認した。これからも分かるように、バイキング時代より4世紀も後の羅針盤の時代になってからも、太陽が隠れた際に航行の誤差をなくすためには光学コンパスが重要だった可能性がある」

 この研究は学術専門誌「英国王立協会紀要(Proceedings of The Royal Society)A」(数学物理研究版)に掲載されている。(c)AFP/Laurent Banguet