【10月26日 AFP】シリア政府による反体制運動への弾圧の一環として、国営病院の入院患者に対する拷問や虐待が行われているとの報告書を、国際人権団体アムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)が25日、発表した。医療関係者も拷問の標的にされているという。

 ロンドンに本部を置くアムネスティは、全39ページの報告書で、「シリア政府は病院を、反体制派をつぶすための弾圧の道具に変えた」と述べた。

 報告書は、負傷した患者が少なくとも4か所の国営病院で、医療スタッフや治安要員から拷問や虐待を受けた様子をまとめている。

 さらに報告書は、「デモ参加者や暴動に関連した負傷者を治療した疑いがもたれた医療スタッフも、逮捕や拷問の憂き目に遭っている」と述べ、医療スタッフらが板挟みになっていると指摘した。

 アムネスティの中東・北アフリカ研究員のシリナ・ナサー(Cilina Nasser)氏は、「シリア当局が治安部隊に病院内での自由な行動を認めたとみられ、本来は患者を治療するはずの病院スタッフらが患者の拷問や虐待に関与していることが多いようだ」と語った。

 同報告書によると、多くの人びとが政府系病院に行くことを恐れて、私立病院や設備の乏しい仮設病院で治療を受けているという。

 報告書は、「シリアの医療スタッフは耐え難い状況に置かれている――負傷者を治療するか、それとも自分の身の安全を守るか。選択肢は2つに1つだ」と述べた。

 一方、シリアの有力人権活動家は、反体制デモへの武力弾圧が3月に始まって以来、シリア政府は3万人以上を拘束したと主張している。(c)AFP