【10月18日 AFP】気候変動によって多くの動植物の大きさが小さくなっているとする論文が16日、科学誌「Nature Climate Change」に掲載された。これらの動植物の中には、飢餓に近い状態で暮らしている10億人を超える人びとの貴重な栄養源になっているものもある。

 微生物から食物連鎖の上位にいる捕食動物まで85種の動植物のデータを検討したところ、45%近くが数世代を経るうちに小型化していたという。

 論文を書いた研究者たちは、急激な気温上昇と降水パターンの変化が生物の大きさに与える影響は、予想できない深刻な結果をもたらす恐れがあると警告している。

 これまでの研究で、最近の気候変動により生物の生息地と繁殖サイクルのタイミングが変化したことは知られていたが、動植物の大きさに与えた影響についてはほとんど注目されてこなかった。

■化石が示す温暖化による生物の小型化

 シンガポール大学(National University of Singapore)のジェニファー・シェリダン(Jennifer Sheridan)氏とデービッド・ビックフォード(David Bickford)氏は、気候変動関連の遠い過去の現象や、比較的最近の実験や観察についての文献を調査した。

 その結果、化石資料は、気温が上昇した時代に海洋と陸上の両方で生物の大きさが徐々に小さくなったことを明らかに示していた。

 現在の気候変動に似ていると言われることが多い5500万年前の温暖化では、数千年の間に甲虫類、ハナバチ、クモ、カリバチ、アリの大きさが50~75%小さくなっていた。リスやモリネズミなどの哺乳類も約40%小型化していた。

 現在の温暖化のペースは、この暁新世・始新世境界温暖極大期(Palaeocene-Eocene Thermal Maximum、PETM)当時よりもはるかに速く、多くの生物種で小型化が始まっていると論文は指摘している。

 植物は大気中の二酸化炭素濃度が高くなると大型化すると考えられていたため、植物にも温暖化で小型化したものがあるという発見は驚きだったが、論文の著者たちは、温度や湿度、利用できる養分の変化によって成長が阻害されたためだろうと話している。

■いまも多くの生物が小型化

 昆虫、爬虫(はちゅう)類、両生類などの変温動物は温暖化の影響をダイレクトに受ける。気温が摂氏1度上がるごとに代謝が約10%活発になり、エネルギーの消費が増えた結果、小型化することを示唆する実験結果があるという。

 ヨーロッパヒキガエルはわずか20年のうちに胴回りが大幅に小さくなり、カメやウミイグアナ、トカゲの一部の種にも同様の傾向がみられた。

 天然ものや養殖の水生生物の小型化は乱獲が原因とされてきたが、実験や観察によると水温の上昇、特に河川や湖沼の水温上昇が一定の役割を果たしているという。

 スズメ、オオタカ、カモメなどの鳥類やヒツジ、アカシカ、ホッキョクグマなどの哺乳類にも小型化の傾向はみられた。
 
 最も心配なのは食物連鎖の下位にいる生物、特に海洋に生息する小さな植物性プランクトンや、カルシウムを作る生物への影響だ。海水の酸性化や、海水温上昇で海水に含まれる酸素や栄養分が減ることにより小型化が進んでいる。

 論文を書いた研究者たちは、現在の温暖化は前例のない速さで進んでいるため、多くの生物、特に世代交代のスピードが遅い種は、適応できないかもしれないと指摘している。(c)AFP/Marlowe Hood