【10月10日 AFP】国連人口基金(UN Population Fund)は6日、超音波検査の普及で胎児の性別判定が可能となった結果、インドと中国を中心としたアジア地域で男性と比較して女性が1億1700万人不足していると、ベトナム政府と共催したハノイ(Hanoi)の会議で発表した。

 女性人口の減少が顕著な国々において、その影響は今後50年以上におよび、特に中国やインドでは、男性の結婚相手が不足するという。


■ 技術の進歩で「選択的中絶」が可能に

 会議資料のなかで、国連人口基金は「この偏った男女比は男児が好まれる傾向を反映したもので、性を選別する新技術(超音波検査など)の普及もこれに貢献している」と指摘した。

 また、フランスの人口統計学者クリストフ・ギルモト(Christophe Guilmoto)氏は、胎児の性別判定が可能となったことで、多くの親たちが「選択的中絶」を行っていると語る。

 大多数の国において出生児の男女比率は、女児100人に対し男児104~106人という割合だ。だが、国連人口基金によると「アジアの複数の国、特に中国とインドにおいて、この比率差が過去25年で徐々に広がってきた」という。

 過去数年間の国連統計によると、女児100人に対する男児出生数は、中国118.1人、インド110.6人、アゼルバイジャン117.6人、ベトナム111.2人となっている。

■ 男児好む傾向が招く男性の結婚難

 ギルモト氏は、「いくつかの国では、出生後も男女差別が完全にはなくなっていないことが、女児や少女の死亡率の方が高いという事実を通じて示されている。女児に対する養育放棄の傾向も、これを反映したものだ」と語った。

 国連人口基金は、男児が好まれる傾向の背景には、資産を受け継ぎ、老後の親の世話をするのは息子たちである一方、娘たちは結婚に持参金が必要なうえ結婚すれば家族の一員ではなくなるという根深い伝統や社会経済的な影響力があると指摘する。

 ギルモト氏によると、仮に10年以内に男女比が平常に戻ったとしても、中国とインドの男性たちは今後数十年にわたって「結婚難」に見舞われることになると予測する。「男性たちの結婚年齢が大幅に高齢化するだけでなく、男女比の不均衡によって独身男性の数が急増するだろう。これは、(成人男女の)ほぼ全員が結婚していることが当然だった社会にとっては、大きな変化となるだろう」(c)AFP