【10月7日 AFP】地球の海の大部分は、数十億年前に落下した彗星(すいせい)が運んできた大量の氷によってできた可能性があるとの研究結果が、5日の英科学誌ネイチャー(Nature)に発表された。

 この仮説を支える証拠は、水に含まれる重水素(水素の安定同位体の1つ)の比率だ。

 欧州宇宙機関(European Space AgencyESA)のハーシェル(Herschel)宇宙望遠鏡に搭載された赤外線装置で、2010年10月~11月に地球の近くを通過したハートレー第2彗星(Hartley 2)の氷を分析したところ、重水素の比率が地球上の水と同じだったという。

 天文物理学者たちは長年、地球の水の起源について頭を悩ませてきた。誕生間もない地球は灼熱(しゃくねつ)の高温で、水を含めすべての揮発性物質は蒸発した。39億年前には、水が豊富に存在するのは太陽系外周部の低温域だけで、そのため地球の水の起源について、これまでは火星と木星の間を周回する小惑星にばかり注目が集まっていた。

 しかし研究を率いた独マックス・プランク太陽系研究所(Max Planck Institute for Solar System ResearchMPS)のパウル・ハルトフ(Paul Hartogh)氏は、「従来の説は、地球の水の10%足らずが彗星からもたらされたという調査結果から導かれたものだ」と指摘。同僚のミリアム・レンジェル(Miriam Rengel)氏も「彗星がもっと重要な役割を果たしていたことを示唆する初の研究成果だ」と自信をのぞかせている。

 氷をもたらした彗星の衝突は、地球の誕生から約800万年後に起こったとみられている。

 研究に参加した米ミシガン大学(University of Michigan)の天文学者、テッド・バージン(Ted Bergin)氏は「液体の水がなければ、地球に生命は存在できない。いつ、どのようにして海ができたかというのは基本的な問題だ。大きな謎だが、今回の新発見はパズルの重要なピースだ」と話している。(c)AFP