【9月7日 AFP】入院患者にとって深刻な脅威となっている病原真菌カンジダ・アルビカンスの人体組織への付着能力に焦点を当てた研究によって、この菌には隠れた弱点があるかもしれないことが明らかになった。5日の米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に論文が発表された。

 カンジダ・アルビカンスは人類の間では広く拡散しているが、通常は膣(ちつ)感染症と口腔カンジダ症以外の健康被害はもたらさない。ところが、がんやHIV、臓器移植などで免疫力が低下した人や病人にとっては危険な菌で、重症化すると半数近くが死に至る。

 院内感染の原因として4番目に多いこの菌は、体内に挿入されたカテーテルや人工関節、心臓補助装置のプラスチック表面が感染経路となっている場合が多い。

 カンジダ・アルビカンスには、新薬に対抗するため細胞壁の構造を自在に変えられるという厄介な問題がある。

 英インペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College London)のエルネスト・コタ(Ernesto Cota)氏率いる研究チームは今回、カンジダ・アルビカンスのどの部分を標的にすればよいかを明らかにした。この菌が人間の細胞に付着してコロニーを作る際に、「Als adhesin」と呼ばれるタンパク質の微小な部分を活用していることが分かったのだ。これは、ハイテクスキャナーを使ってこのタンパク質の構造を観察することで明らかになった。
 
「Als adhesinは菌に対し、人体の隅々にまで繁殖する能力を与えていた。感染が危険であることはこれで説明できる」とエルネスト氏。次のステップとしては、実験用の化合物を作製し、カンジダ・アルビカンスの付着防止に効果があるかを研究室で確認したいという。(c)AFP