万景峰号クルーズ、北朝鮮苦肉の観光策

2011年09月04日 12:59 発信地:北朝鮮

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×北朝鮮の羅先(Rajin)の広場で、故金日成(キム・イルソン、Kim Il-Sung)国家主席の肖像画を見学する中国人観光客(2011年8月29日撮影)。(c)AFP/GOH CHAI HIN

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【9月4日 AFP】船内にはカラオケも淹れたてのコーヒーもあるが、下甲板のトイレの水は流れず、床上に寝ている乗船客もいる――ようこそ、北朝鮮初の観光船、万景峰(Mangyongbong)号へ。

 貧困にあえぐ北朝鮮の当局は観光を促進し、外貨を稼ごうと、国際観光事業に乗り出すことを決めた。外国人ジャーナリスト120人と中国人の旅行業者を乗せ、北朝鮮北東部のうらぶれた港、羅先(Rajin)から景勝地・金剛山(Mount Kumgang)へと出航したのは、建造から39年、クルーズ用に改修された貨客船、万景峰号だ。

 30日、羅先の古い桟橋には勢いのよい音楽が流れ、花を手に整列した学生や労働者数百人が、航行21時間のテストクルーズに旅立つ万景峰号を拍手喝采で見送った。

 甲板上のテーブルには、フルーツや卵料理、魚料理などが乗った大きな皿と北朝鮮製ビールが並ぶ。テーブル脇に座っている羅先経済特区の黄哲男(Hwang Chol Nam)人民委員会副委員長(48)は、「改修は1週間前に終わったばかり。でも、すでに金剛山との往復テストは済ましてある」と説明する。ぱりっとしたスーツの胸元には、故金日成(キム・イルソン、Kim Il-Sung)国家主席の肖像が描かれた赤いピンバッジが留められている。



 このクルーズ観光は、北朝鮮の朝鮮テプン国際投資グループ(Korea Taepung International Investment Group)と羅先特別市の共同企画だ。

 北朝鮮に投資を呼び込むために1991年に経済特区が設けられた羅先だが、インフラ不足や慢性的な電力不足、政府への信頼の欠如などのせいで、いまだ活況を呈したことはない。しかし、核開発を断念させるための圧力として国際社会が科している制裁に苦しむ北朝鮮当局は今、この地域の活用を再び目論んでいる。黄副委員長によると、羅先市当局が重点を置こうとしているのは、貨物輸送、水産加工、観光の3分野だ。

 北朝鮮は1987年まで欧米からの観光客を受け入れていなかった。現在も厳しく規制しているが、徐々に門戸を開いている。とはいえ、金剛山は2008年に韓国人観光客が北朝鮮軍兵士に射殺される事件が発生して以来、両国の政争の核心となっている。加えて、クルーズの出発地である羅先は貧困地区だ。

 ツアーも厳しい監視下にあり、接触できる北朝鮮の人びとといえば、ツアーガイドかみやげ物店のスタッフ、ホテルの従業員のみで、日常の北朝鮮の光景もバスの車窓からわずかに目にできるだけだ。モノトーンの服を着た住民が自転車で通りすがるか、たまに車が行きかうだけで、道路は静まり返っている。アパートが集まる小区画の多くも荒れており、その中に時々、この国の指導者たちの「偉大さ」を表す記念碑などが建っている。



 羅先にある巨大な白いホテルのロビーを入ると、訪問者を迎えてくれるのは、金正日(キム・ジョンイル、Kim Jong-Il)総書記とその父親、故金日成国家主席の肖像だ。『偉人・金正日』、『先駆者朝鮮』といった題名の北朝鮮に関する書籍が詰まったガラスケースの上には「本は物言わぬ導師であり、人生の友である」という金日成氏の言葉が飾られている。

 ホテルの部屋は質素だが清潔。しかし、インターネットに接続できるところは地域内のどこにもない。電話は高い上、接続も頼りない。外国の携帯電話は、北朝鮮に入国する際にツアーガイドに取り上げられる。こうした通信の問題を解消するために、羅先市ではタイの企業と向こう26年間の独占契約を結び、早ければこの9月からインターネットの整備に取り掛かると黄氏は言う。ただしメディア規制が極めて厳格な北朝鮮ゆえ、ビジネス関連以外のウェブサイトは遮断されるだろうことは黄氏も認めた。

 羅先を訪れる人の多くは隣国・中国からの観光客だ。夏期の旅行シーズンの中国人観光客数は、1日平均150人。中国南東部、福建(Fujian)省から来ていた男性は、国境の中国側で開かれたビジネス会議の帰りに「私たちの国と比べて、どのくらい変化が起きているのかを見たかった」ので立ち寄った。

 北朝鮮観光を専門に扱う北京の旅行会社、高麗グループ(Koryo Group)のサイモン・コッカレル(Simon Cockerell)マネージング・ディレクターは、羅先は万人受けする観光地ではないかもしれないが「人が行かないところへ行ってみたいという人は大勢いる。観光業界的には、ここは最も人が行かない国の最も人が行かない地域だ」と語る。

 貨客船として1992年まで北朝鮮と日本を結んでいた万景峰号の甲板へ戻れば、食堂で中国人グループが北朝鮮国旗の下、カラオケを歌い、客たちは魚の乾き物をつまみにビールを飲んでいる。客室は2段ベッドの部屋もあれば、マットレスが敷かれただけの部屋もある。等級の高い部屋にはテーブルと椅子、個室トイレが付いている。トイレの水は出るか出ないか分からず、出たとしても茶色い。

 しかし、テプングループのPark Chol Su副社長は、10月に欧州の旅行会社など100業者を招き、同じツアーを体験してもらうつもりだとはりきっている。北朝鮮当局では、このツアーの参加者には査証を免除すると約束している。計画が順調に進めば、クルーズ船はもっと快適な設備のものにアップグレードするという。「来年は1000人程度が乗船できる、もっと大きくて良い船を、と思っている。東南アジアのほかの国から借りて来ることになるだろう」

(c)AFP/Marianne Barriaux

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