【8月17日 AFP】米グーグル(Google)が125億ドル(約9600億円)でモトローラ・モビリティ(Motorola Mobility)を買収するというニュースは、グーグルの基本ソフト(OS)「Android(アンドロイド)」のパートナー企業から好意的に受け止められた。だが実際には、Androidスマートフォン(多機能携帯電話)端末メーカーは、戦略の変更を余儀なくされるかもしれない、と専門家は分析する。

 グーグルはモトローラ買収にあたり、アンドロイド事業に変化はないことを強調し、従来通りオープンプラットホームとしてアンドロイドOSのライセンスを続けると表明した。

 グーグルによると、アンドロイドの主要パートナー企業であるサムスン電子(Samsung Electronics)や台湾のHTC、ソニー・エリクソン(Sony Ericsson)、LG電子(LG Electronics)は、グーグルがモトローラの保有する多数の特許を取得することでアップル(Apple)やマイクロソフト(Microsoft)などのライバルによる特許訴訟からAndroidを守ることができるというコメントを出したという。

■グーグルがパートナー企業と競合?

 しかしIT業界の専門家の間には、アンドロイドパートナー各社は、本音では今回の買収をあまり歓迎していないのではないかという声がある。

「HTCやサムスン、LG、ソニー・エリクソンの人たちが、買収のニュースを聞いてどんな朝を迎えたのか考えてみる必要がある」と、米IT関連調査会社ガートナー(Gartner)のマイケル・ガーテンバーグ(Michael Gartenberg)氏。「アンドロイド端末事業を行うサードパーティーのOEM企業は大きな重圧を感じているだろう」

 ガーテンバーグ氏は「とても単純なことだ。プラットホームのライセンス供与をする側がライセンスを受ける側と競争して、うまくいったためしがない。自社が成功すればライセンスを受けた企業がイライラするし、ライセンスを受けた企業が成功すれば自社がイライラする」と説明し、多くの企業が戦略を再検討するだろうと予想する。

 グーグル関連の著書があるケン・オーレッタ(Ken Auletta)氏は、米誌ニューヨーカー(New Yorker)のウェブサイトで、「(グーグルは)最近、アンドロイド端末はアップルのiPhoneとは違い、どの電話事業者にもオープンだと電話事業者に懸命に伝えようとしていた」と指摘。

 だが、「グーグルはモトローラに『最恵国待遇』を与えないと言っているが、それを信じる人がほとんどいなくても驚くには値しないだろう」と語り、「グーグルの株主が、特別なモバイル機能をモトローラにだけ提供したいと考えれば、それは他のアンドロイドパートナー企業の利益とは相反することになるだろう」と述べた。

■マイクロソフトに追い風か

 調査会社フォレスター・リサーチ(Forrester Research)のアナリスト、ジョン・マッカーシー(John McCarthy)氏は、マイクロソフトの携帯端末向けOS「Windows Mobile」が、アンドロイドの代替候補として携帯端末メーカーに提供される可能性も出てきたと語る。「マイクロソフトのスティーブ・バルマー(Steve Ballmer)最高経営責任者が、『マイクロソフトはハードウエアに手を出さない唯一のソフトウエア会社です』とアジアのメーカーを説得してまわる姿が目に浮かぶよ」

 また、ウェブサイト「247WallSt.com」のポール・オーシック(Paul Ausick)氏は、グーグルによるモトローラ・モビリティの買収は「アンドロイドのライセンスを受けた企業たちを動揺させる可能性が高い」と述べ、マッカーシー氏が主張する「マイクロソフトにとってのチャンス」との意見に同意した。「サムスンやHTCにとって、(OSの)変更はコストもかかるし容易でもないだろう。だが資金が豊富なマイクロソフトなら、コスト面で協力することができる」

 調査会社ガートナーは、2012年末にはアンドロイドは世界のスマートフォンの49.2%のシェアを占めると予測している。一方、iPhoneのシェアは2012年も18.9%と横ばいの予測。Windows Mobileは2011年末までに5.6%のシェアを獲得し、2012年には10.8%に拡大する予測だという。携帯端末メーカー大手、フィンランドのノキア(Nokia)は2月、同社のスマートフォンのOSにマイクロソフトの携帯端末プラットホームを採用すると発表している。(c)AFP/Chris Lefkow