【7月26日 AFP】中国の高速鉄道は2007年、上海(Shanghai)~蘇州(Suzhou)間で開業した。営業距離はわずか4年で8300キロを超え、世界最大の高速鉄道網に発展。中国共産党創立90周年の前日にあたる6月30日には北京(Beijing)と上海を結ぶ高速鉄道が予定より1年早く開業した。
 
 鉄道輸送システムの需要が高まるなか、中国政府は近年、高速鉄道の整備に多額の投資を行ってきた。高速鉄道への財政支出は昨年だけで7000億元(約8兆5000億円)。今や高速鉄道の営業距離としては中国が世界の約半分を占めるまでになったが、その高速鉄道網は現在でも急速に拡大を続けている。営業距離は2012年までに1万3000キロ、2020年までに1万6000キロ以上に伸びる予定だ。

■安全性に対する懸念は事故以前から

 23日夜、中国東部浙江(Zhejiang)省温州(Wenzhou)郊外で停車中の高速鉄道に後続の列車が衝突する大惨事が起き、中央政府は鉄道システムの「緊急総点検」を命じたが、鉄道を巡る汚職や猛烈な速さで進む開発が安全性を犠牲にしているとの指摘は以前からあった。

 今年3月、建設会社と複数の個人が北京~上海高速鉄道の建設費から1億8700万元(約23億2600万円)を流用していたことが明るみになった。これに先立つ2月には、劉志軍(Liu Zhijun)前鉄道相が高速鉄道網の契約に絡み、数年間にわたって計8億元(約100億円)のリベートを受け取っていたとして解任された。

 北京の市場調査会社IHSグローバルインサイト(IHS Global Insight)のシニアアナリスト、Ren Xianfang氏は、中国の高速鉄道の開発スピードは「驚異的」だとした上で、「持続できない可能性がある」と警告を発した。「高速鉄道が安全性を軽視しているとのわれわれの懸念が的中した。高速鉄道に乗るには二の足を踏んでしまう。政府にとっては非常に悪い状況だ」

 また、以前から低所得者層を中心に高速鉄道の運賃が高すぎるとの批判が噴出しており、乗車券の売り上げは芳しくない。

 高速鉄道を巡っては、開発に携わった複数の外国企業が「技術を盗まれた」「ノウハウの譲渡を強要された」などとして中国の国営企業を非難しているが、中国側はこれを否定している。(c)AFP/Allison Jackson

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