【7月7日 AFP】動物の顎(あご)が4億年前に初めて深海で形成されて以来、その形はほとんど変わっていないという研究結果が、6日の英科学誌ネイチャー(Nature)に発表された。

 英大による研究結果によると、顎に似た構造の部位が脊髄動物に登場してから比較的、短期間のうちに、目まぐるしいほど様々な形態の「顎」が現れ、最終的に「ちょうつがい形」の顎が脊髄動物の「不朽のモデル」となったという。今日、人間を含む脊髄動物の99%の顎は、この基本構造のバリエーションだ。

 一方、4億2000年前のデボン紀で全ての海や湖、川を独占していたのは、顎も歯も持たず骨板に覆われた魚たちだ。これらの魚類は、海草や小さな餌を口から吸い込んで食していた。

 原始の海洋環境に大量に生息していた、この顎のない魚たちが急激に減った原因については、ちょうつがい形の顎を持つ海洋生物の登場によるものだと、長年にわたって考えられてきた。原始的なサメなど、顎のある魚の方が餌の捕食に優れていたため、顎がなく口を動かせない魚が絶滅していったという筋書きだ。

 しかし、今回の新発見は、この筋書きに疑問を突きつけた。

■ 顎のある魚とない魚は共存していた

 論文の主著者である英ブリストル大学(University of Bristol)のフィリップ・アンダーソン(Philip Anderson)教授は、「顎を獲得した初期の生物の採餌メカニズムが、顎のない魚の多様性に影響を与えることは、ほとんどなかった」と言う。

 一例を挙げれば、顎のある魚とない魚は、少なくとも3000万年もの間、共存関係にあった。さらに、顎のない魚がいよいよ消滅しようという頃になっても、顎のある「いとこたち」に進化上の変化は認められていない。こうした点から、両者の間に直接的な競争関係はなかったと考えられる。

 これまでの研究では、顎のある脊椎動物、「顎(がく)口類」の登場は、地球大気の酸素化と呼ばれる現象と関係しているとされている。

 この大気と海洋の構成の変化は、地質年代的に言えば比較的短期間に起こったものだ。しかし、これについても、アンダーソン教授は「今回の研究結果で、大気の酸素化よりもずっと以前に、顎口類で最初の爆発的多様化が起こっていたことが示された」と話している。(c)AFP