【7月6日 AFP】1998年から10年間、地球温暖化の進行が止まったのは、中国で石炭消費が増加した結果、大気中の硫酸塩エアロゾルが増え冷却効果をもたらしたためだとする米国とフィンランドの科学者らによる研究結果が、米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)にこのほど発表された。

 地球温暖化説に対する懐疑論者は、1998~2008年には一定の気温上昇が見られなかったことを根拠に、人間の活動で排出される温室効果ガスが地球温暖化の原因との見方を否定している。

 今回、研究を主導した米ボストン大学(Boston University)のロバート・カウフマン(Robert Kaufmann)教授も、懐疑派の指摘がきっかけで研究を思い立ったとAFPの取材に語った。

 カウフマン教授らの研究チームが、気温上昇を防いだ要因と結論付けたのは、石炭だった。

 石炭の燃焼量は、急激な経済成長を続ける中国を中心に、過去10年間で急増した。石炭を燃やすと硫黄が排出されるが、カウフマン教授らはこの硫黄の粒子に妨げられて太陽光が地表まで届かず、温暖化を防いだと見ている。

 カウフマン教授によると、こうした現象には前例がある。第二次世界大戦後の経済成長期に欧米や日本では温室効果ガスが急増したが、硫黄の排出量も急速に増え、その結果、温室効果ガスの影響が相殺されたという。

 研究は、地球の気温が上昇し始めたのは、先進国が硫黄排出量を削減する取り組みを始めた1970年初頭ごろからだと指摘している。

 世界の石炭消費量は、03~07年の5年間で26%増加した。うち75%は中国によるものだ。中国は今も世界最大の温室効果ガス排出国であり、排出量も増え続けているが、一方で石炭工場に汚染物質除去装置を設置するなど、ようやく大気汚染の防止対策を始めた。そして、こうした措置を講じたことによって09年から再び、地球の気温が上昇し始めたという。

 ただ、大気中の硫黄は一時的な冷却材の役割を果たす反面、酸性雨や呼吸器系の疾患の原因となるなど、数々の有害な影響をもたらす。

 このため、地球温暖化を阻止する手段を硫黄に求めることは「毒をもって毒を制すようなものだ」と、カウフマン教授は述べた。「硫黄による温暖化阻止説にも一理あるが、これに満足する人間は少ないだろう。中国のように大気汚染の中で生活することを意味するのだから」(c)AFP/Shaun Tandon

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