【6月21日 AFP】ペットは飼い主に似ると言われるが、急速に高齢化が進む日本ではペットも高齢化し、「老齢ペット」のケア時代が到来している。

 ペットフードの改良や動物医療の進歩により、家族の一員たるペット犬や猫たちの寿命も伸びてきた。そこで登場しているのが、おむつや歩行補助器具から、24時間態勢の緊急医療や再生医療まで、様々な高齢ペット向け産業だ。

 市場は巨大だ。社団法人ペットフード協会(Japan Pet Food Association)によれば、日本にはイヌとネコだけでも、2200万匹のペットがいる。15歳以下の子どもの数よりも30%も多い。

 最新の人口統計によれば、日本において15歳以下の人口は全人口の13%だ。その一方で、65歳以上は約25%で4人に1人を数える。日本人の寿命は世界でも最高水準である反面、出生率は最低水準だ。このため、日本の人口は高齢化が進むとともに、2007年以降は減少を続けている。

 他方、矢野経済研究所(Yano Research Institute)によると、ペット自体の売買からペットフード、関連商品まで含んだ現在の日本のペットビジネスの市場規模は、年間1兆3700億円規模に達する。また、多くの飼い主が、ペットが老いたときには安楽死させるよりも、最期まで世話をしてみとってやりたいと望んでいる。

■ 高齢ペット用製品、寝たきりペットの介護器具も

 このような現状を背景に、ペットたちに快適な老後を過ごしてもらおうと、多くの企業が新たな製品やサービスを打ち出している。こうした企業の1つ、大阪の住宅メーカー、ヤマヒサ(Yamahisa)では、5年前にペットケア事業を開始した。

 同社マーケティング部では、家族の一員とみなされているイヌたちの老後ケアの需要に注目した。イヌの高齢化が顕著になり始めたのは、約20年前に流行したシベリアン・ハスキーやゴールデン・レトリーバーといった大型犬が年老いてきたからだという。「寝たきりになった大型犬の世話には、飼い主にかなりの体力が要求されます」

 こうしたケアを支援しようと、同社では寝たきりになったイヌを、そのまま乗せて移動できるカートや歩行補助用のハーネス、抱っこ用スリング(肩からかけるバッグ状の抱っこ紐)、床ずれしないよう寝返りさせるハンドルがついたベッドやおむつなどのペット犬用介護用品を扱っている。

■ ペット向けの緊急医療や再生医療も

 一方、電機メーカーの富士通(Fujitsu)は獣医チームと連携し、24時間態勢の緊急医療に乗り出した。最近、都内の動物クリニックで、試験的に夜間の緊急診療を始めたところで、レントゲンやCT、MRIスキャン、超音波診断など最新の設備が揃っている。翌日には、検査結果やカルテがコンピュータ・ネットワーク経由でかかりつけの獣医に送られる。

 このほか、ペット向けの再生医療も始動している。東京慈恵会医科大学(Jikei University School of Medicine)では、ネコの腎臓を再生することに成功した。チームを率いる横尾隆(Takashi Yokoo)氏によると、ネコの死因の3割以上が腎臓障害だ。

 チームではブタの胎児の腎臓にネコの間葉系幹細胞を注入し、ブタの胎児の体内でできた「新しい腎臓」を、ネコの腹膜に移植して腎形成に必要なホルモンを分泌させた。都内の新会社とすでに提携しており、2年以内にペットへの実用化を目指している。手術費用は5万円程度となる見込みだ。

 この技術は当初、人間の治療のために研究が始められた。だが、横尾氏はペット医療での需要も伸びるはずとみており、将来的にはペットの再生医療分野もさらに開拓されるだろうと語った。(c)AFP/Miwa Suzuki