【6月13日 AFP】片頭痛に関連した遺伝子を3個見つけたとする論文が、12日の英科学誌「ネイチャー・ジェネティクス(Nature Genetics)」(電子版)に発表された。うち1個は、片頭痛との関連が女性だけに見られるものだという。

 片頭痛は激しい頭痛を伴い、時折、曇りガラスを通して物を見ているような「前兆」が伴う。女性が片頭痛になる頻度は男性の3倍から4倍だ。片頭痛の原因は不明だが、科学者らは、脳細胞が刺激に異常反応してしまう脳障害の一種とみなしてきた。遺伝的形質も大きな役割を担っていると考えられてきた。

 米ブリガム・アンド・ウィメンズ病院(Brigham and Women's Hospital)の研究チームは、片頭痛の遺伝的要素を探るため、女性2万3230人(うち5122人が片頭痛患者)のゲノムについて、ヒト遺伝子情報の基本的な分子構成要素約30億組との個人差を比較した。

 その結果、片頭痛患者において頻繁に見られる3個の遺伝子変異(PRDM16、TRPM8、LRP1)を発見した。PRDM16とTRPM8は頭痛の中でも特に片頭痛に関連し、TRPM8は女性の片頭痛にのみ関連していた。LRP1は外界の感知と脳内の化学経路に関連していた。なお、片頭痛の前兆に結び付いていると見られる遺伝子変異は見つからなかった。

「片頭痛患者では、脳内の神経細胞が一定の刺激に対してそれぞれ異なる応答をする。この『クロストーク』には多くの神経伝達物質が関与し、一部が片頭痛において特定の役割を担っていると考えられる。LRP1がこうした神経伝達物質の経路と相互作用すると、片頭痛を増進または抑制する神経応答が生まれるのではないか」と、ある研究者は分析した。

 なお、こうした結果をドイツやオランダなどの小規模な研究で再現してみると、これらの遺伝子変異の継承で片頭痛リスクが約10~15%変動することが分かった。遺伝子の影響をただちに診断ツールとして使用できるほど大きな数字ではないが、生物学的に片頭痛を理解する上では重大な結果だと研究者は話している。(c)AFP