【6月9日 AFP】インドの首都ニューデリー(New Delhi)で前週末、大勢の信奉者とともにインド政官界の腐敗に抗議するハンストを開始し、警察によって退去させられたインド・ヨガ界の有名指導者、スワミ・ラムデヴ(Swami Ramdev)氏が8日、自分や信奉者が再び弾圧された場合は、民兵組織を結成して対抗することも辞さないと述べ政府に対し威嚇した。

 自身が出演するテレビのヨガ番組が毎日放送されるなど国民的人気を集めるラムデヴ氏は前週末、インド政官界の腐敗に抗議するとしてニューデリーでハンストを開始。ともにハンストを行う信奉者が数万人に膨れ上がったため警察は参加者の排除に乗り出した。この際、信奉者ら70人以上が負傷し、うち2人が重傷となっている。

■武装発言で離れる信奉者も

 ニューデリーを追われインド北部の拠点に移動したラムデヴ氏は、食事を取るべきという医師の助言にもかかわらずハンストを続け、再び自分たちが標的にされることがあれば暴力による反撃に出ると述べ、インド国民の男女に自分の「軍」に加わるよう呼び掛けた。

 報道チャンネルNDTVによると、同氏は、国民たちは準備できていると述べ、「彼らは究極の犠牲を払う覚悟だ。彼らには軍事訓練が施されるだろう。われわれは男女1万1000人の軍事組織を作る」と語った。

 ラムデヴ氏の広報担当者はAFPの取材に対し、同氏の信奉者たちは武器を持ったとしても自衛のためにしか使用しないだろうと語った。ただし、自らや信奉者が警察に再び襲われた場合、ラムデヴ氏は立ち上がるつもりだとも述べた。

 腐敗追放運動は多くの国民の気持ちを捉えてきたが、ラムデヴ氏の今回の「武装発言」は、多くの中心的な支持者を遠ざけるものと受け取られている。

 パラニアッパン・チダムバラム(Palaniappan Chidambaram)内務相は報道陣に対し、「(ラムデヴ氏は)その本性と真の意図をさらけ出した。やりたいようにさせておけばいい。いずれ法が決着を付ける」と語った。

■腐敗が巣くうインド政官財界
 
 5日にラムデヴ氏が追放された際の警察による扱いについてマンモハン・シン(Manmohan Singh)首相に対する批判が集まる中、同氏らの抗議行動によってインド国内の政治的緊張は高まっている。
 
 ニューデリーにあるマハトマ・ガンジー(Mahatma Gandhi)廟では、ラムデヴ氏への連帯を示す大群衆の1日ハンストが行われた。

 4月にも腐敗追放運動の活動家たちが98時間ハンストを行い、結果、自分たちが新たな反汚職法の草案作りに参加することを政府に認めさせた。この時のハンストのオブザーバーを務めたアンナ・ハザレ(Anna Hazare)さん(73)は長年、腐敗追放運動に関わってきた活動家で、多くの支持者がいる。ラムデヴ氏への連帯ハンストもハザレさんが呼び掛けた。

 仕事を休んでハンストに参加したという25歳のITエンジニア、ロリー・ミシュラ(Rolly Mishra)さんは「わたしはアンナさんを支持するから来たが、ラムデヴ氏たちのデモで、悪いことは何もしていない参加者に対する警察の不当な行動にショックを受けた」と述べた。

 急速に経済発展を遂げつつあるインドでは、汚職スキャンダルが次々と発覚し、腐敗は大きな問題として浮上している。最近では携帯電話の周波数帯の割り当てをめぐる汚職で、約400億ドル(約3兆2000億円)の国家歳入が失われた可能性があるとされた事件が記憶に新しい。政府は腐敗の取り締まりを約束し、その一環として8日、税金滞納者を追跡する委員会を設置すると発表した。

 そうした政界にあって、クリーンなベテラン閣僚として定評のあるA・K・アントニー(A.K. Antony)国防相は、最近の汚職スキャンダルは、インド政官財界が新たな透明性の時代に踏み出さなければならないことを示していると語る。「秘密という壁は政治、ビジネス、行政、司法の世界で徐々に崩壊し始めている。ひとたびその壁の崩壊が勢いづけば、途中で止めることはできない」

 インドの人気作家の1人、チェタン・バガット(Chetan Bhagat)氏は政府に抗議するオンライン運動を立ち上げ、ハザレさんやラムデヴ氏に連帯し、1日ハンストに参加しようとツイッターで呼び掛けた。(c)AFP/Rupam Jain Nair