【6月9日 AFP】世界銀行(World Bank)は8日、ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)現ロシア首相が大統領だった時代を中心とする10年間にロシアの国際競争力は低下し、いまではBRICS諸国の中でも影が薄いとする報告を発表した。

 旧ソ連国家保安委員会(KGB)出身のプーチン氏は2000~2008年にロシア大統領を務め、民営化されていたさまざまな産業の再国営化を進めたが、このプーチン政権下の政策に関する批判は珍しい。 

 一方で世銀はプーチン氏の後継者、ドミトリー・メドベージェフ(Dmitry Medvedev)大統領が提唱するイノベーション(技術革新)を刺激しようという政策を支持した。

 2012年の次期ロシア大統領選にはプーチン氏、メドベージェフ氏ともに出馬が有力視されている。

 世銀の報告書はプーチン大統領時代について、石油とガスを中心とする基本的な品目の輸出への依存が膨らんだと指摘し、その原因の1つとして、国内市場が非競争的で労働生産性も低く、先進国への輸出で有利な品目をほとんど生産しなかったことを挙げている。

■輸出の大半は一次産品と武器

 大統領選を視野に有権者との会合を重ねているプーチン氏も6日、若者たちとの会合で「基本的にわが国は、非軍事分野にはほとんど投資してこなかった」と認めた。

 世銀では、2000~08年にロシアの輸出の伸びが失われたと指摘した。この時期はプーチン氏の大統領時代と重なり、ロシアと合わせてBRICSと呼ばれるブラジル、インド、中国、さらにこれに最近加えられた南アフリカ共和国が国際舞台で大きく踏み出していた。
 
 プーチン氏が大統領1期目を務める以前から、石油と天然ガスがロシアの輸出の半分以上を占めていたことは世銀も承知している。世銀によるとこの割合は最近ではさらに増え、この2品目だけでロシアの輸出の3分の2を占めるに至り、金属や木材といったほかの天然資源も合わせれば約8割に達する。残る2割の大半は武器だという。

「ロシアではサービス輸出が減退している(99年にGDP比11.4%だったが08年は同7.6%)点が、BRICS諸国の中では特殊」だと世銀は指摘している。

 報告書は、現在メドベージェフ大統領が進めている「競争とイノベーション」政策を生産性改善と組み合わせれば、長期的な成長につながる可能性があると結論付けている。(c)AFP/Dmitry Zaks