【6月4日 AFP】ペルーで初めての女性大統領を目指すケイコ・フジモリ(Keiko Fujimori)氏は弱冠36歳かもしれない――だが、彼女には、19歳のころから父、アルベルト・フジモリ(Alberto Fujimori)元大統領のファーストレディーを務めてきた経歴がある。

 父のアルベルト・フジモリ氏は1990~2000年までペルー大統領を務めた末、汚職スキャンダルでペルーを出国した。帰国後、人権侵害や汚職の罪で有罪判決を受け、いまも服役中だ。

 ケイコ・フジモリ氏は、その父と距離を置くどころか、逆に選挙ポスターに父を起用し、父のかつての同志たちと活動をともにする。父フジモリ氏が獄中から娘の選挙活動を指揮しているのではないかとの懸念も聞こえてくるほどで、さらには、ケイコ・フジモリ氏が大統領に就任すれば、父に恩赦を与えるのではないかと危ぐする声もある。

 だが一方で、アルベルト・フジモリ氏の支持者は現在も多い。ハイパーインフレを打開し、武装ゲリラを打破した人物として、いまもなお、有権者の5分の1に支持されている。

 ケイコ氏は、その父の人気を元手に、自らへの支援を広げてきた。

■強硬路線、貧困対策、自由貿易推進…次々と政策

 ケイコ・フジモリ氏は、父の強硬路線を受け継ぎ、死刑を再導入して暴力犯罪に立ち向かい、ペルーに長年はびこる汚職と闘うことを約束している。

 さらには、左派の対立候補であるオジャンタ・ウマラ(Ollanta Humala)氏と同じく、貧困問題の解決も掲げる。10年間に及ぶ経済成長にもかかわらず、ペルーでは3分の1以上の国民が貧困の中で暮らしている。

 ウマラ氏はかつてベネズエラのウゴ・チャベス(Hugo Chavez)大統領を公然と支持してきたことがネックになっているが、ケイコ氏は、財界からも自由経済政策の推進者として理解されている。

 また、2人の娘や米国人の夫、さらには汚職を非難してアルベルト・フジモリ氏と離婚した実の母さえも選挙運動にかつぎだし、ソフトなイメージを打ち出している。

 一方で、コカイン密輸組織がケイコ氏の選挙運動を支援しているとの疑惑が上がるなど、汚職疑惑からは、ケイコ氏もクリーンではいられなかったようだ。

 ケイコ氏がリマ(Lima)から同国北中部一帯で選挙運動を行えば、多くの人びとが集まるのは事実だ。だが、ケイコ氏は、父の政策を受け継ぎ、父と同じ軍部と財界のコネクションを使うのではないかと疑いのまなざしを向けられる存在でもある。(c)AFP