【5月18日 AFP】世界最大の粒子加速器「大型ハドロン衝突型加速器(Large Hadron ColliderLHC)」を運用する欧州合同原子核研究機構(European Organisation for Nuclear ResearchCERN)は17日、2012年末までに「神の粒子」とも呼ばれるヒッグス粒子(Higgs Boson)の有無に関して結論が出るだろうとの見解を示した。

 CERNのロルフ・ホイヤー(Rolf-Dieter Heuer)所長が英国王立協会(Britain's Royal Society)で会見を開き、「2012年の終わりまでには、ヒッグス粒子のシェークスピア的な問い、『あるべきかあらざるべきか』に答えが出るだろう」と述べた。

 光速に近い速度で陽子同士を衝突させるLHCは、当初は出力を上げる作業のため12年初めに停止される予定だったが、ヒッグス粒子の探索のため停止を1年間延期することが数週間前に決定されたという。

■ヒッグス粒子の発見で標準理論が完成

 物理学においては、質量という謎がいまだに解明されていない。謎を解くカギと考えられているのが概念的な亜原子粒子ヒッグス粒子で、1964年にその存在を提唱した英物理学者ピーター・ヒッグス(Peter Higgs)の名前にちなんでいる。

 ヒッグス粒子は、「質量は粒子そのものには由来しない」という理論に基づいている。この理論によると、質量は、粒子と非物質粒子(ヒッグス粒子)の衝突で一部の粒子が減速することにより発生する。

 ヒッグス粒子が発見されれば、宇宙のすべての粒子や力を1つの統合された理論のもとで説明するいわゆる「標準理論(Standard Model)」の最後のピースの1つが埋まることになる。

 4月下旬、CERNがヒッグス粒子の影を検出したといううわさが野火のように広まったが、誤った情報であることがのちに判明した。

 ヒッグス粒子が発見されると、発見者とヒッグス氏のノーベル物理学賞受賞はほぼ間違いないと言われている。
 
 CERNのホイヤー所長は、ヒッグス粒子が存在しないとの結論に達した場合でも、標準理論は振り出しに戻るものの、「成功と言える」と指摘した。(c)AFP/Richard Ingham

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