【5月3日 AFP】2001年の米同時多発テロ発生後、米軍主導のアフガニスタン攻撃が開始されてから10年近くが経つ。しかしケシ栽培は、巨額をかけた追放の取り組みにもかかわらず、多くの農民や旧政権勢力タリバン(Taliban)にとって依然、大きな資金源となっている。

 ケシ栽培、そしてタリバンの活動が活発な南部カンダハル(Kandahar)州は今も襲撃事件や衝突が止まない。この州のマイワンド(Maywand)地区のある農民は「ケシは手間がかからず、水が少なくて済む上、(ほかの作物よりも)もっと儲かる。この地区の住民の8割はケシを育てているだろう。理由は明らか、簡単だからだ」と語った。

 戦火で荒廃したアフガニスタンだが、ケシ栽培は世界の9割を占める。その多くは欧米諸国の都市の街頭でヘロインとして売られるか、アフガニスタン国内の約100万人にも上るドラッグ常用者の手に渡る。

 ケシはまたタリバンの反政府活動の資金源でもある。米軍主導の攻撃により政権から追放されて10年近くになるが、タリバンに殺害される外国人兵士の数は年々減るどころか増えている。

 国連薬物犯罪事務所(UNODC)へのアフガニスタン代表、ジャン・リュック・ルマイウ(Jean-Luc Lemahieu)氏はAFPの取材に対し、暴力に満ちた情勢が、農民たちをケシ栽培に駆り立てると言う。「不安定な状況や紛争下では、ケシは最も栽培に適した植物だ。あなたが農民だったらきっとこう考えるだろう。『彼ら(密売組織の幹部)が農場へやって来て、種をくれ、融資を提供してくれ、収穫まで手伝いに来てくれる』」。農民たちは、あちらこちらに地雷が埋まり、犯罪組織に襲撃されるかもしれない危険な道路を移動しなくても済む。

 欧米政府が率先して行おうとしてきたケシ栽培の撲滅が、欠陥のある解決法だったとみなす関係者は多い。ある匿名の政府高官は「ケシ畑を攻撃することは地元住民に対する攻撃を意味するに等しい。そんな方法で人びとの心をつかむのは難しい」と語る。

 地方部での支持獲得は、アフガニスタンの反政府勢力に対する戦略として欧米軍が中心に置くものの一つだ。しかしアフガニスタンの全世帯の6%の収入源になっていると思われるケシ栽培は、自分から消滅する気配は露とも見せていない。

 前週発表されたUNODCの報告書によると、今年のアフガニスタン全土のケシ栽培高はわずかな減少が見込まれるものの、2011年には、前年に栽培が報告されていなかった北部5州で、ケシ栽培が復活しそうだ。

 ケシ栽培最大の中心地は相変わらず、国内生産量の4分の3を産出している2州、カンダハル州と、隣接するヘルマンド(Helmand)州だ。この2州は最も衝突の激しい地域でもある。農業に頼って家族を養う貧しい村の男たちにとってケシ栽培は、小麦を育てた場合の4倍もの高収入を約束してくれる作物だ。

 2010年には胴枯れ病が流行ったため、今年の乾燥ケシの相場は1キロ281ドル(約2万3000円)前後にまで高騰しており、儲けはいっそう増えそうだ。(c)AFP/Aymeric Vincenot