【5月2日 AFP】洪水の多いイタリア・ベネチア(Venice)で街を海面上昇から守ろうと、潟の入り口に可動式の堤防を建設する計画が進んでいる。

「モーゼ(Moses)」プロジェクトと呼ばれるこの計画。およそ3000人が携わり、総工費は54億ユーロ(約6500億円)に上る。2014年に完成予定だ。

 同プロジェクトに参加する建築家の1人、フラビア・ファッシオリ(Flavia Faccioli)氏は「ひとたび完成すれば、このシステムは最高3メートルの水位上昇までベネチアを守ることができる」と語った。

 海底に設置された基部から、巨大な箱状の板が突き出て堤防となる構造。高潮が来たときは、板の内部に圧縮空気を送り込んで板を立て、潟への水の侵入を防ぎ、高潮が去った後は、板内に水を送り込み、板が海底に戻っていくという仕組みだ。

 アドリア海(Adriatic Sea)と潟とを結ぶ三つの入り江の計4か所に、合計78枚の稼動式堤防が設置される。

 ベネチアのジョバンニ・オルソニ(Giovanni Orsoni)市長は「画期的なプロジェクトだ。イタリアにとってだけでなく世界にとっても最も重要なプロジェクトの1つだ」と語った。

 ベネチアは20世紀を通じて23センチ水没した。市民はモーゼプロジェクトに、建造物の保存や洪水防止への期待を寄せている。(c)AFP/Ljubomir Milasin