【4月13日 AFP】鳥類は恐竜から鋭い嗅覚を受け継ぎ、その後さらに発達させた。それを教えてくれたのは小型肉食恐竜バンビラプトル(Bambiraptor)である――。こうした論文が13日、学術専門誌「英国王立協会紀要(Proceedings of the Royal Society B)」に発表された。

 2足歩行をする小型恐竜が長い時を経て羽毛を生やし、木々の間に住み始め、ついには飛ぶようになった。これが鳥類の起源だと考えられている。これまでに発見された中で最古の鳥類は、約1億5000万年前に生息していた始祖鳥(Archaeopteryx)だ。

 初期の鳥類は嗅覚がお粗末だったというのが、これまでの定説だ。視覚や平衡感覚、筋肉の協調を重視する進化的圧力により、嗅覚がなおざりにされたというのがその根拠だ。

■CTスキャンで嗅球を比較

 だが、カナダ・カルガリー大(University of Calgary)などの研究チームは、この定説を覆す発見をした。

 研究チームは、恐竜、絶滅鳥類、現生鳥類の頭骨計157サンプルをCTスキャンしてそれぞれの立体画像を製作し、嗅覚に関係する脳の部位である嗅球の大きさを測定した。現生鳥類やほ乳類では、嗅球が大きいほど嗅覚が鋭いことが分かっている。

 測定の結果、現生鳥類の嗅球の系統は小型肉食恐竜の獣脚類までたどれることが明らかになった。有名なティラノサウルス・レックス(Tレックス、Tyrannosaurus rex)も、この獣脚類に含まれる。

■初期鳥類の嗅球の大きさは現代のハト程度

 初期鳥類の嗅球の大きさは現代のハトと同じくらいで、予想をはるかに超える鋭い嗅覚を持っていた。さらにその後、今から約9500万年前には、嗅覚をさらに発達させていた。 

 このような進化の過程を明らかにしてくれたのが、約9500万年前のバンビラプトルの化石だ。バンビラプトルはイヌほどの大きさで、飛ぶことはできなかったが体は羽毛で覆われていたと推測される。骨格は、速く走れるのが特徴の現生鳥類、ミチバシリに驚くほど似ていた。このバンビラプトルの嗅球が、餌探しや渡りの際に嗅覚に頼るヒメコンドルやアホウドリと同程度の大きさだったのだ。 

 研究に参加した古生物学者、ダーラ・ゼレニツキー(Darla Zelenitsky)氏は、「バンビラプトルのような小型恐竜がこれらの鳥と同等の嗅覚を発達させていたことは、ハンティングの際に嗅覚が重要な役割を果たしていたことを物語っている」と話した。

 なお、現生鳥類の間でも嗅覚に大きな開きがあることも分かった。アヒルやフラミンゴなど、比較的原始的な鳥の嗅球は比較的大きかったが、カラス、フィンチ、オウムなど頭が良いとされる鳥では小さかった。知性が発達した代償に嗅球が小さくなったと考えられるという。(c)AFP