【4月12日 AFP】南極の若いペンギンたちは、海氷の溶解による餌の減少で、生存が次第に困難になりつつあるとする論文が、11日の米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に発表された。

 米国海洋大気庁(National Oceanic and Atmospheric AdministrationNOAA)の南極生態系研究チームは、30年前から、西南極でペンギンの個体数などを調査している。

 それによると、研究用のタグを付けた赤ちゃんペンギンのうち、2~4年後に繁殖地に戻ってきたのは1970年代に40~50%だったのが、近年は10%程度にまで激減している。特にこの地域でマカロニペンギンに次いで多いヒゲペンギンは、生息地が南シェトランド諸島(South Shetland Islands)に限られていることもあり、絶滅の危険性が高いという。 

■オキアミが激減

 チームは1992年、ペンギンの数は海氷の変化に応じて増減しているとする論文を発表した。この中でヒゲペンギンは、ほかのアデリーペンギンとは違って雪や氷を避けて巣を作ることもあり、温暖な年に強いと推定された。

 ところがこの直後ぐらいから、データに変化が見え始めた。海氷が大幅に溶解し始めると、ヒゲペンギンもほかのアデリーペンギン同様に劇的に減り始めたのだ。

 チームはペンギンの主食であるオキアミのデータもとり続けていたが、以前は豊富にあったオキアミが近年38~81%ほど減っていることが明らかになった。

 したがってチームは、ペンギンの個体数減少の元凶はオキアミであり、この減少がヒゲペンギンにもほかのアデリーペンギンにも同様の影響を及ぼしているという推論に達した。

 オキアミが激減している最大の原因は気候変動だが、オキアミを主食とするクジラの個体数が回復していること、水産養殖が盛んになってオキアミが大量に投入されていること、などの要因も考えられる。

 論文は、温暖化が続けば冬季に海氷がはらなくなり、その結果オキアミが減ってペンギンがさらに減少する恐れがあると警鐘を鳴らしている。(c)AFP/Kerry Sheridan