【4月1日 AFP】カナダのベニザケの一種で、過酷なルートを遡上するサケが、他の種類よりも環境変化への適応力が高く、生存力が強いことがブリティッシュ・コロンビア大学(University of British Columbia)の研究で明らかになった。31日の米科学誌サイエンス(Science)に発表された。

 同国ブリティッシュ・コロンビア(British Columbia)州にある全長2000キロのフレーザー川(Fraser River)には、100種を超えるベニザケの仲間が生息しているが、その大半は環境の微妙な変化に極めて敏感で、水温や水流、移動途中の高度など、わずかな変化が大量死を招くことさえある。フレーザー川の水温は1950年以降、すでに2度近く上昇している。

 毎年、数百万匹のベニザケが産卵のためこの川を遡上するが90年以降、その数は減り続けている。その上、同大によると、遡上する間に40~95%のベニザケが死んでしまう。

 しかし、「チルコ(Chilko)」と呼ばれるベニザケの一種は、他の種類よりも耐性が高いことが同大の研究で明らかになった。このチルコ・サーモンの遡上ルートが過酷な環境であることが一因だろうと研究チームは推測している。

 チームは8種類のベニザケを用い、同じベニザケの仲間でも異なる種が、遡上ルートの環境変化にいかに適応していくかを比較する初の大規模な研究を行った。

■全長650キロ、高低差1キロの過酷なルートを遡上

 ベニザケはそれぞれの種類ごとに毎年まったく同じルートを遡上する。ルートによって距離や高度、水温や水流の強さは異なる。楽なルートを上る種類もあるが、チルコ・サーモンのルートは過酷だ。チルコ・サーモンは全長650キロを遡上する間に、1000メートルの標高差を体験し、「ヘルズ・ゲート」(「地獄の門」の意)と呼ばれる川幅35メートルの狭い流域を通過する。チルコ・サーモンは真夏にこのルートを遡上し、氷河湖にたどり着いて産卵する。

 研究チームは種類別の環境適応力を観察するために、フレーザー川の水流や水温に似せて設計した巨大な管に8種類のベニザケを入れて泳がせ、心拍数や代謝機能を観察した。この結果、水温が最適値以上に上昇すると、サケの泳力は落ちた。これは循環系の機能が弱まるためと思われる。しかし、他の種と比べてチルコ・サーモンは、水温や環境の変化に対して生理学的な反応が少なかった。

 論文の主著者エリカ・エリアソン(Erika Eliason)氏は「チルコ・サーモンはいわば『スーパーフィッシュ』だ。他の種類よりも標高の高いところを泳ぐことができ、より大きな温度変化に適応できる。このことは、彼らの遡上ルートの厳しい自然条件と関係があると考えている」と語った。(c)AFP/Jean-Louis Santini

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