【3月23日 AFP】米インターネット検索大手グーグル(Google)が進めている書籍の電子化をめぐる訴訟で、出版社や一部の著作権保持者とグーグルの間でまとまった修正和解案について米連邦地裁は22日、承認を拒否した。

 ニューヨーク(New York)連邦地裁のデニー・チン(Denny Chin)判事は48ページにわたる意見書の中で、13か月前にまとめられた修正和解案について、「書籍のデジタル化や、誰もがアクセスできるデジタル図書館の創設は多くの人に恩恵をもたらすだろう。しかし、和解案はグーグルに「著作権者の許可なくあらゆる書籍を利用する権利」を付与するもので、「非常に行き過ぎた点」があり「公正さ、適切性、妥当性に欠ける」と述べた。

 米作家協会(Authors Guild)と米出版社協会(Association of American PublishersAAP)は2005年、大量の書籍をスキャンして電子化しようというグーグルの計画は著作権侵害にあたるとして集団訴訟を起こした。

 グーグルと原告の間で2008年にまとまった和解案では、グーグル側が著作権料の未払い分として1億2500万ドル(約100億円)を支払うほか、デジタル化した書籍の著作権管理などを行う独立機関「Book Rights Registry」を設立し、デジタル化に合意した著者や出版社に、デジタル化書籍の販売収入や広告費による収益を支払うことなどが盛り込まれた。

 今回、チン判事は修正和解案を認めなかったものの、両者に再交渉の余地を残した。グーグル側は判事の決定を検討中だとしているが、米作家協会と出版社側は新たな合意に達したいと意欲を示している。

 和解案の支持者たちは、グーグルが提案している電子図書館やオンライン・ブックストアは、絶版になった本を入手できるようにして著者たちに対しても作品からの新たな収入源を切り開くものだと主張してきた。

 一方、独占禁止や著作権、プライバシーの侵害といった観点から反対を唱える側は、和解案によって、著作権は保護されているが著作権者が不明の作品、いわゆる「孤児作品(orphan works)」について、グーグルに排他的権利を与えてしまうものだと反論していた。

 また米司法省は、著者が不参加の表明(オプトアウト)をしない限りすべての本がデジタル化の対象になるとして和解案を批判していた。チン判事も今回、この「オプトアウト方式」の部分に懸念を示した。

 グーグル側のヒラリー・ウェア(Hilary Ware)弁護士は、今回の決定は「明らかに期待はずれ」で、グーグル側の選択肢を検討したいと述べた。

 和解案に反対する米消費者保護団体「コンシューマー・ウオッチドッグ(Consumer Watchdog)」のジョン・シンプソン(John Simpson)氏は、今回の裁判所の決定はグーグルプレックス(Googleplex、グーグル本社のこと)のエンジニアたちに、他人の著作物を使いたいときには許可を得る必要があるというメッセージを送るものだと語った。(c)AFP/Charlotte Raab