【3月23日 AFP】ケニアコーヒーは近年、生産量が4分の1に激減し、ほとんど忘れ去られた存在になっていた。しかしここ最近の世界的なコーヒー豆の高騰により、苦難の時代が終わりを迎えて「黄金時代」に突入するのではと、ケニアの生産者らは大きな希望を抱いている。

 ケニアの高地で栽培されるアラビカ種のコーヒー豆は、ブレンド用の高品質な豆として定評がある。だが、かつては同国の最大の輸出品目だったものが、生産高は1997年の13万トンから2010年の3万6000トンへ激減した。

 コーヒー豆は世界では原油に次ぐ貿易品目だが、ケニアのコーヒー農家は最貧困層の一翼を担っている。コーヒー栽培をやめたりほかの農産物に切り替えたりする生産者も後を絶たず、生産者の高齢化も進んでいる。
 
■落札額のケタが違う

 首都ナイロビ(Nairobi)にある英国植民地時代の風格漂うコーヒー豆の競売所では、ここ最近、異変が起きている。電光掲示板に赤く点滅する数字のケタが違うのだ。指標となるAAクラスの豆は2月、2010年の最高値の2倍を超える1022ドル(約8万3000円)をつけた。

 バイヤーの1人は、「ここ数週間、1キロあたり10ドル(約800円)から12ドル(約970円)の値が付いている。高級豆の中には100%値上がりしているものもある」と話した。

 ケニアコーヒーが過去40年間で最高値を記録している背景には、インドなどの新興国でコーヒーを飲む習慣が急速に広がったことなどにより需要が伸び続ける一方で、在庫が史上最低水準にとどまっていることが挙げられる。世界第1位の生産量を誇るブラジルがコーヒーの裏年にあたること、生産量世界4位のコロンビアが天候不順に見舞われ3年連続の不作になったことが大きい。

■コーヒー農家もコーヒーを飲めるように?

 だが、発展途上国での起業を支援するNGO「Technoserve」のジョン・ローガン(John Logan)氏は、高値に安住していてはコーヒー産業は活性化しないと警鐘を鳴らす。コーヒー豆の高値はしばらく続くことが予想されるが、価格が下落する日は必ずやってくる。

 ローガン氏が必要と考えるのは、生産高を増やすことと、協同組合の信頼性を高めることだ。同国で現在、協同組合を通じて生産しているコーヒー農家は推定60万人。だが長年にわたるまずいガバナンス(統治)により、小規模農家はコーヒー栽培を放棄せざるをえない事態に陥っていた。

 とは言え、ケニアコーヒー生産者協会のダニエル・ムビチ(Daniel Mbithi)会長などによると、コーヒー農園に若者たちが戻るようになってきたという。「(コーヒー豆の)全盛期が再びやってくるかは分からないが、人々が熱狂していることは確かだ」(ムビチ会長)

 なお、コーヒー農家でさえ栽培した豆を買うゆとりのなりケニアでは、コーヒーは金持ちの飲み物と考えられている。あるコーヒー農家は、「価格が高い状態が続けば、コーヒー農家もコーヒーを飲めるようになるんじゃないかな」と話した。(c)AFP/Jean-Marc Mojon