【3月8日 AFP】ルワンダのジョン・ルタレマラ(John Rutaremara)さん(31)は、「メスを使わない」精管切除(パイプカット)手術がルワンダで始まり次第、申し込むつもりだ――ルタレマラさんには子どもが2人いて、これ以上は育てることができないのだという。

 ルタレマラさんの行動は、サハラ以南アフリカでは珍しい部類に入る。というのも、サハラ以南アフリカでは、パイプカットは去勢と同等であり、精力を弱めるものだと誤解されているからだ。

 しかし、ルタレマラさんは決断した。日当6ドル(約500円)の支払いはルワンダの水準では良い方だが、家計は苦しい。

「出費が多い。学費、食費、光熱費は(首都)キガリ(Kigali)ではとても高い」とルタレマラさんは語る。「子どもが増えれば、生活がとても困難になる」

 ルタレマラさんの週労働時間はすでに80時間。毎朝、太陽が昇るずっと前に家を出て、日没のずっと後に帰宅する。

「子ども8人で毎日空腹な思いをさせるくらいなら、子ども2人の面倒をしっかりと見て十分に教育を受けさせる方を選ぶよ」

■安定と発展で人口急増

 ルワンダの人口は過去50年で4倍に急増し、1000万人を超えた。爆発的な人口増加を食い止めるため、ルワンダ当局はメスを使わないパイプカット手術「NSV(Non Scalpel Vasectomy)」を導入するという大胆な方針を打ち出した。

 ルワンダの国土は小さく、すでにアフリカ大陸で最も人口密度が高い。1994年の大虐殺以後の再建が進むなか、人口はますます増加すると政府はみている。

 ポール・カガメ(Paul Kagame)大統領の政権下で、ルワンダは自らの切り開いた開発政策により、アフリカ大陸で最も活力ある経済国となった。

 このままでは資源不足に陥るとの危機感のもと、ルワンダはNSVによる家族計画プログラムの拡充を始めた。パイプカットが選ばれたのは、女性の避妊手術よりも安価で、合併症も引き起こしにくいからだという。

 同プログラムを率いるレオナルド・カガボ(Leonard Kagabo)氏は「手術は15分ほどで終わり痛みもない。局部麻酔をかけ、非常に小さな針を使うだけだ」と語る。

 この手術法は1970年代に中国で開発され、およそ10年後に米国に紹介された後に世界に広がった。

■パイプカットに異論も

 この計画が初めて紹介された際には、ルワンダ政府が男性70万人のパイプカットを3年以内に行うつもりだと報じられ、議論を巻き起こした。政府が「貧困層を去勢するつもりだ」と、野党も厳しく非難した。

 しかし、保健省はそのような計画はないと説明する。「70万人にパイプカットをするという目標は存在しないし、これからもそういう目標を立てるつもりはない。そういった行為は倫理に反するとともに人権侵害にもあたる」と、保健省ナンバー2のアグネス・ビナグワホ(Agnes Binagwaho)氏は語る。

 また、パイプカットが普及することでコンドームの使用率が下がり、その結果としてヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染者数が増加するとの懸念を示す専門家もいる。しかし、保健省高官は適切な教育により防ぐことができると反論する。

■劇的な構造変化が背景に

 ルワンダでは大半の人が農業を営み、何世代にもわたって貧困の中で暮らしてきた。「国民の80%が自給自足の生活を送っている」と、保健省高官は指摘する。しかし、食料や土地の不足により、大家族を維持することが徐々に難しくなっている。「過去には、農家にとって子どもが多いということは富も多いということだった。しかし、それは劇的に変化したのだ」

「現在は、子どもが多いということは学費や医療費が多くかかるということだ。さらには子どもたちが多ければそれぞれが相続できる土地も少なくなる」と、同高官は語った。(c)AFP/Steve Terrill