【3月8日 AFP】カダフィ政権と反体制派の衝突が拡大するリビアから、隣国チュニジアへ脱出したエジプト人約900人を救出するため派遣されたフランスの軍艦が、一人の避難民も乗せずに帰国するはめになった。

 フランスが誇る強襲揚陸艦ミストラル(Mistral)は5日、避難民をエジプトのアレクサンドリア(Alexandria)に運ぶ任務を帯びてフランス南部のトゥーロン(Toulon)港を出発し、7日にチュニジアのザルジス(Zarzis)港に到着した。しかし、停泊後間もなく、仏海軍は避難民を乗せずに同日中に出港すると発表した。

 混乱やチュニジア国境に近い避難民キャンプでの伝染病を恐れ、リビアから隣国チュニジアに入ったエジプト人は4万人を超えた。欧米諸国は3日から空輸を始め、米軍だけでも先週末に640人のエジプト人を帰国させていた。飛行機なら3時間で着く祖国に、船で3日かけて帰ることに我慢できない避難民たちはとっくに帰国していたのだ。

 乗組員たちは、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)と赤新月社(Red Crescent)に提供する医療品と食料を降ろしていた。ミストラルに積まれていた69のベッドと乗船していた28人の医師に出番はなかった。

 仏海軍初の電気推進艦であるミストラルは、2006年にイスラエルがレバノンに侵攻した際にも外国人救出のために派遣されたことがある。(c)AFP