【3月6日 AFP】2012年にルーマニアの首都ブカレスト(Bucharest)で開催されるラムサール条約(Ramsar Convention)締約国会議の準備の一環として先週シンガポールでワークショップが行われた。各国から参加した研究者たちは、無節操な農薬の製造や使用によってアジアのコメ生産が深刻な打撃を受けかねないと指摘した。

 ワークショップ主催者の1人、豪ジェームズクック大(James Cook University)オーストラリア熱帯淡水研究センター(Australian Centre for Tropical Freshwater Research)のジョージ・ルカーチ(George Lukacs)氏はAFPのインタビューに応じて次のように語った。

「コメの需要増に対応するため増収のプレッシャーを感じた未熟な生産者は農薬に頼りがちだ。農薬の過剰使用によって害虫が異常発生することがあり、中国では『害虫の嵐』と呼ばれている」

 ルカーチ氏によると、農薬はいったん各国の当局に登録された後は使用実態を監視する仕組みが不十分なため、規制がないに等しいのが現実で、放置すれば広大なアジアの水田地帯が荒廃する恐れもあるという。ルカーチ氏は農薬メーカーと各国の規制当局、地域社会が連携して、農薬の製造と使用の正しいあり方を普及させる必要があると語った。

 農薬の問題以外にも、アジアの稲作は比較的少数の品種に集中しているため、特定の病害虫が大流行する恐れもあるという。

 ラムサール条約は水田を含む世界の湿地の保護と活用に関する国際条約で、今回のワークショップにはオーストラリア、インド、日本、マレーシア、フィリピン、シンガポール、韓国、ベトナムなどアジア各国の科学者が出席した。(c)AFP/Martin Abbugao