【2月7日 AFP】人類の脳の大きさが過去3万年で縮小しているとの研究結果が米科学誌ディスカバー(Discover)に発表された。科学者たちは、これは知能が低下しているのではなく脳がより引き締まり効率的になった「進化」ではないかと主張する一方、戸惑いも見せている。

 欧州、中東、アジアで発掘された頭がい骨を測定した結果、現生人類「ホモ・サピエンス(Homo sapiens)」の脳の平均サイズは、3万年前と比べて約10%縮小し、1500立方センチメートルから1359立方センチになっていた。縮小はテニスボール1個分に相当する。

■「生存の危機」なくなったのが縮小の原因か?

 3万年前ごろに原因不明の絶滅をした現生人類の近縁種ネアンデルタール人は、現生人類よりもはるかに大きな脳を持っていた。また、1万7000年ほど前にラスコー洞窟(どうくつ)の壁画を残したホモ・サピエンスに属するクロマニヨン人の脳も、現代の人類の脳よりも大きかった。過酷な環境で生きていくために、大きな脳が必要だった、と米ミズーリ大学(University of Missouri)の心理学者デビッド・ギアリー(David Geary)教授はみている。

 ギアリー教授ら研究チームは、人口密度の増加に従って脳が縮小したことに着目。人口密度が増加すると、人びとが互いに近くで暮らすようになり、集団間・階層間での交流が増えるとの仮定のもと、「人口密度増加は社会の複雑さが高まることを示している」と考えた。

「複雑な社会が誕生すると、ヒトは生存するために知能を使う必要がなくなったので、脳が縮小したのではないか」と、ギアリー氏はAFPに語っている。

■脳の大きさと知性に関連性はあるか

 一方、人類の脳が小さくなったことは知性の低下を意味しない、と米デューク大学(Duke University)の人類学者、ブライアン・ヘア(Brian Hare)准教授は語る。むしろ、別種の、より洗練された知性を身につけたのだという。

 ヘア准教授は、同様の現象が野生動物と飼育動物との間にもみられると指摘。たとえばハスキー犬はオオカミよりも脳が小さいが、ハスキーはまるで人間の子どものように人びとの会話や身振りを理解でき、つまり、より洗練された知性を持っている、とヘア氏は語る。

「オオカミはイヌよりもはるかに大きな脳を持っているが、イヌの方が(オオカミより)はるかに洗練されていて知性的で柔軟だ。つまり、知性は脳の大きさと関連性があまりないといえる」とヘア氏は指摘した。(c)AFP/Jean-Louis Santini