【1月31日 AFP】ニコチンに対する渇望感を引き起こす脳の部分を特定したとの研究が、30日の英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された。「禁煙薬」の開発に道を開く可能性もある。

 論文を発表したのは、米フロリダ(Florida)州のスクリプス研究所(Scripps Research Institute)のポール・ケニー(Paul Kenny)氏らの研究チーム。マウスなどの実験で、これまでニコチン依存症に関係があると指摘されてきた「CHRNA5」遺伝子の機能を調べた。CHRNA5遺伝子は、ニコチン分子に反応する脳内の受容体を制御する役割を果たしていることが知られていた。

 研究チームは、通常のCHRNA5遺伝子であれば、ニコチンをほんの少量摂取しただけで「摂取を中止せよ」との信号を脳に伝達する機能があることを突き止めた。さらにニコチンの量を増やすと、「おいしくない食べ物や飲み物」を摂取したときと同様の反発作用のようなものがはたらくという。

■遺伝子の変異で、多量に摂取してもニコチンが嫌にならない

 しかし、ニコチン受容体のうちの「alpha5」と呼ばれる部分をノックアウト(削除)したマウスでは、この「中止せよ」との信号が発信されることがなく、その結果、マウスたちはニコチンを欲しがり続けた。

 研究チームは同様の状況が人間でも起こりうると考えている。これまでに行われた遺伝子研究で、「alpha5」の機能が阻害される遺伝子の変異が起こることがわかっている。米国人のうちおよそ30~35%の人びとは、ニコチンをいつまでも求め続けるタイプのCHRNA5遺伝子を持っているという。

 ケニー氏は「この結果は、特定の遺伝的変異をもった人びとが、たばこへの依存を発達させやすいことを説明するものだ」と指摘した。「彼らは、ニコチンの嫌悪感をもよおす部分に鈍感であるために、ニコチン習慣を獲得しやすいのだ」

 ニコチン受容体の研究をする米ペンシルベニア大(University of Pennsylvania)の神経科学者、ジョン・リンドストーム(Jon Lindstrom)氏は、「この研究は、新たな禁煙対策に重要な示唆を与えた」と語った。(c)AFP/Marlowe Hood