【1月15日 AFP】米軍戦闘機の相当部分に取って代わる予定の次世代戦闘機「F35(F-35 Joint Strike FighterJSF)」の開発は、史上最も高額の兵器計画となり、緊縮財政下の米国内で批判を集めつつある。

 コスト超過と度重なる開発の遅れで、計2443機の開発総額は3820億ドル(約31兆6000億円)という驚異的な額に達するとみられている。

 第5世代戦闘機と呼ばれるF35は、敵のレーダーに捕捉されにくいステルス性能により、世界の空での優位を保とうと開発された。しかし最近になって中国初のステルス戦闘機が明るみに出たことで、両国による空の覇権争いへと転ずる可能性が出てきた。

■国防長官自らが批判

 米国内では、国防総省内からさえもF35への批判が上がり始めている。同省高官らによれば、コストは当初予算の倍に膨れ上がり、1機9200万ドル(約76億円)となっている。また試験や設計で生じた問題によって2001年にメーカーと交わされた10年契約は2016年まで延長された。

 ロッキード・マーチン(Lockheed Martin)は米軍需大手ノースロップ・グラマン(Northrop Grumman)、英航空防衛機器大手BAEシステムズ(BAE Systems)と共同でF35A、B、Cの3タイプの開発を行っている。F35Aは米空軍のF16戦闘機およびA10攻撃機と置き換えられる予定で、F35Cは現行のF/A18に替えて空母に配備される。またF35Bは短い滑走路での離陸と垂直着陸が可能で、現行のハリアー(Harrier)の後継機という位置づけだ。

 しかしロバート・ゲーツ(Robert Gates)米国防長官は最近、「湯水のように金を使う文化は、引き締めの文化に改める必要がある」と述べ、コスト超過は続けられないと釘を刺した。ゲーツ長官は特にF35Bの開発状況に懸念を示し、猶予として「今後2年の間に性能、コスト、スケジュールの点で軌道修正できなければ中止すべきだ」との考えを示した。経費節約の動きの一環として、ゲーツ長官はこのF35B、449機のうち124機の調達を2016年まで延期した。

 批判のもうひとつの的は、米プラット&ホイットニー(Pratt & Whitney)が開発を手がけているF35のエンジンが水準を満たさなかった場合の予備措置として、米ゼネラル・エレクトリック(General ElectricGE)と英ロールス・ロイス(Rolls Royce)が共同開発している「第2のエンジン」だ。ゲーツ長官はこのエンジンについて「不必要だ」と言い放った。

■「大きすぎてつぶせない」F35開発

 軍事評論家らは、F35開発は浪費プロジェクトになっていると指摘する。

 「あらゆる防衛計画の中で、『大きすぎてつぶせない』という言葉がF35ほど当てはまる例はない」と米調査会社ティールグループ(Teal Group)の航空宇宙産業アナリスト、リチャード・アブラフィア(Richard Aboulafia)氏は語る。「民生用、軍事用、どちらの計画にしても、過去10年間でこれほどの遅れもコスト超過もあった試しがない」が、F35開発には米国の他に英国など8か国が関与しており、開発コストの9割は米国が負担しているものの、計画変更は容易でないだろう。

 イスラエルやシンガポールなどすでに購入契約を結んでいる国もある。アブラフィア氏は「米国は戦略的理由、経済的理由の双方から、F35計画を国際的に進めたがたっている」と言う。「そうすれば連合軍の戦闘における後方支援、訓練、軍事ドクトリンを大きく簡略化できる。軍用機の輸出で支配的な地位を手にすることも強力な誘引だ。戦闘機の問題であると同時に産業政策でもあるのだ」

(c)AFP/Mathieu Rabechault