【12月11日 AFP】ショパンやドビュッシーも愛した世界最古のピアノ製作会社「プレイエル(Pleyel)」。このフランスの老舗がいま、デザイナーズ家具に活路を見出そうとしている。

 プレイエルの創業は19世紀にさかのぼる。しかし、中国や韓国で製造された価格が2000ユーロ(約22万円)程度のピアノが世界シェアの8割を占めるようになり、プレイエルのグランドピアノの年間生産台数は、10年前の1700台からわずか25台に減ってしまった。

 とはいえ、同社には200年以上も受け継がれてきた最高級の木象眼・木工技術のノウハウがある。

 パリ(Paris)の北、サン・ドニ(Saint Denis)にあるプレイエルの工場では、ニスの香りと板材を加工する音に囲まれて、熟練の職人たちがやすりをかけたり、最後の仕上げをしたりと忙しそうに働いている。

「15人のスタッフが20種類の仕事をこなしています。高級家具職人、漆職人、ニス職人・・・どれも楽器製造で培ったノウハウです」と、同社のアート・ディレクター、アルノー・マリオン(Arnaud Marion)氏はAFP記者に語った。「これらの各分野で、わが社にとても高い技術があることに気付いて、ならば高級家具を製作してみてはどうだろう、となったんです」

■世界的デザイナーと異色のコラボ

 成功を期してプレイエルは、仏国内はもちろん世界的なトップデザイナーの協力を仰いだ。イタリアの家具デザインの巨匠、ミケーレ・デ・ルッキ(Michele de Lucchi)氏もその1人だ。

 デ・ルッキ氏は1台のグランドピアノの横で金属製のショーケースの作業に余念がない。このグランドピアノもデ・ルッキ氏がデザインしたものだ。自身はピアノを弾かないデ・ルッキ氏は「冒険だね。人生がわたしに贈ってくれた、予想外の機会だよ。ピアノをデザインするなんて考えたこともなかった」と語る。

 同氏と組む以前、プレイエルは米国人デザイナーのヒルトン・マッコニーコ(Hilton McConnico)氏に、ピアノ型のソファのデザインを依頼した。その名も「プレイエル」と名付けられたこのソファは、今年から注文生産が始まっている。

 今後も既に5人のフランス人デザイナーと契約を結んでいる。2012年には、パトリック・ジュアン(Patrick Jouin)氏、オリビエ・ガニエール(Olivier Gagnere)氏、ブルーノ・モナー(Bruno Moinard)氏、パトリック・ノルゲ(Patrick Norguet)氏、ノエ・デュショフール・ローランス(Noe Duchaufour-Lawrance)氏の5人の手による高級家具がイタリア・ミラノ(Milan)で開催される国際家具見本市に出展される予定だ。

■歴史を変えるか?高級車に匹敵する高級家具

 デ・ルッキ氏のショーケースとグランドピアノは、来年4月の同見本市に出展される。ピアノの価格は10万ユーロ(約1100万円)と、高級スポーツ車が買えてしまう超高級品だ。プレイエルの家具はどれも非常に高価だが、これは意図的に設定されたものだ。

「いわゆる普通のテーブルやカウチといった、大量生産市場に参入する気はありません。わが社の目指しているのは、他に類を見ないコレクターズアイテムの製作なのです」とマリオン氏は述べた。

 いつの日か、スタインウェイ(Steinway & Sons)製の衣装だんすやベーゼンドルファー(Boesendorfer)製の本棚もこの世に登場するのだろうか? ・・・というのはいささか飛躍しすぎにしても、プレイエルはまさにピアノ業界の多角化という楽譜を書き換えているのかもしれない。(c)AFP/Jurgen Hecker

【関連情報】
ミラノ「サローネ国際家具見本市」、フィリップ・スタルクらが登場