【12月7日 AFP】内部告発ウェブサイト「ウィキリークス(WikiLeaks)」は、国連(UN)の気候変動枠組み条約第16回締約国会議(COP16)に再び対立をもたらすかも知れない。

 メキシコのカンクン(Cancun)で開かれている2週間に及ぶ会議では、新たな国際的合意に向けた進展が出始めている。主要な交渉は7日に始まる予定だが、参加者たちは将来の行動についての文書の草稿作成や、地球温暖化の主要因である森林破壊に対する削減対策などで、すでに一定の進展があると話している。

 英国を拠点とする国際NGOオックスファム(Oxfam)のティム・ゴア(Tim Gore)氏は、楽観はできないものの、会議日程のほぼ半分が過ぎた時点の交渉状況は、前年のCOP15よりCOP16の方がずっと良く、カンクンでは有意義な合意が得られる可能性があると話す。

 欧州連合(EU)のコニー・ヘデゴー(Connie Hedegaard)欧州委員(気候変動担当)も「全般的に言って、一定の進展はあった」と語る。草案は「まだまだ複雑すぎ」、「閣僚レベルの合意に用いる文書は完成していないので、懸念はある」ものの、カンクン会議の最終合意は「視野に入ってきた」という。

■コペンハーゲン合意で米欧が協調

 2009年12月にデンマークで開かれたCOP15でまとめられたコペンハーゲン合意(Copenhagen Accord)は、温暖化の原因となる二酸化炭素の排出削減をすべての主要排出国に求め、産業化以前からの気温上昇を2度以内に抑えることを目標とした。

 ウィキリークスが新たに公開した米公電は、このコペンハーゲン合意を米国とEUが積極的に推進する様子を明らかにしている。

 英紙ガーディアン(Guardian)によるとある公電は、ヘデゴー氏が米高官に、富裕国からの財政支援を必要とする小さな島しょ国こそが「われわれの最高の同盟国になりうる」と述べた、としている。

 米国とEUの目標はインドやブラジルなどの新興国に圧力をかけ、合意文書に署名させること。新興国は気候変動対策を強める一方で排出削減の義務化には強く反対し、気候変動に対する歴史的な責任が先進国にはあるとも主張している。

 また公電には、米国とEUが「非協力的」な国々を「中立化させるか取り込むか、存在意義をなくす」方法について検討していたことが記されていた。特に、会議中に気候変動対策の中身とプロセスの両方に対して反対し続けたベネズエラとボリビアが対象とされていた。

■COP16に及ぼす影響

 COP15に深く関わったヘデゴー氏はこれらの公電について、米国側からみた「一方的で一部の」会話記録にすぎないと指摘するとともに、モルディブなどのぜい弱な島しょ国に圧力をかけたことはないと述べ、「さまざまな理由から、われわれはこれらの国々と協力したいと考えている」と述べた。

 ヘデゴー氏は、交渉過程で「いろんなことを話し合う」のは当然のことで、リークされた公電がカンクン会議を損なうことはないとの考えを示した。

 しかし、ボリビアの交渉担当者、パブロ・ソロン(Pablo Solon)氏は、公開された内容について「深く懸念している」と語る。「これまでわれわれが主張し続け、米国が否定し続けてきた、米政府による妨害や圧力、脅迫が(公電によって)事実だったと確認された」。(c)AFP/Shaun Tandon