【12月7日 AFP】ロシアの裁判所は6日、イワン雷帝(Ivan the Terrible)の末裔だと名乗る実業家に対し、かつて宮殿だったクレムリン(Kremlin、現大統領府)の不動産を支配する権利はないとする裁定を下した。

 ロシアの仲裁裁判所は、首都モスクワ(Moscow)中心部にあるクレムリン内の複数の宮殿とすべての塔の支配権は自分にあるとした実業家バレリー・クバレフ(Valery Kubarev)氏の申し立てを退けた。

 露インタファクス(Interfax)通信によると、判事は「自分の権利が侵害されていることを原告は証明できなかった」と述べた。

 原告のクバレフ氏はロケット科学者で、1990年代から金融にも進出している実業家。自分はイワン雷帝を輩出したリューリク(Rurik)朝の末裔(まつえい)で、子孫たちの集まりにクレムリンを提供したいとして、ロシア政府と文化省を相手取り訴訟を起こしていた。

 9世紀、バイキングの血を引くとされる一家の首長リューリクがキエフ・ルーシ(キエフ公国)を支配した。16世紀、その子孫であるイワン雷帝は自らを「全ロシアのツァーリ」と宣言したが、息子のフョードル1世(Feodor I)でリューリク朝は滅びた。

 クバレフ氏はAFPの取材に対し「こうした裁定が出ることは予期していたので驚いていない。最高裁に控訴し、それでもだめならば欧州人権裁判所(European Court of Human Rights)に訴えたい」と語った。

 クレムリンは現在、一部の教会や有料博物館を除きほとんどの部分が非公開になっている。クバレフ氏は、もし勝訴した場合には多くの人がクレムリンを利用できるようにしたいとしている。(c)AFP