【11月12日 AFP】カリブ海のリゾート地、メキシコ・カンクン(Cancun)沖のターコイズブルーの海中に、全く新しいアートの世界が出現した。400体並んだ等身大の人間の像に、通りすがりの熱帯魚たちが「口付け」してゆく。

 これは、英国の彫刻家ジェイソン・デカイレス・テイラー(Jason deCaires Taylor)氏が「海底における史上最大の現代彫刻美術館」と自画自賛する芸術作品だ。タイトルは「音のない進化(The Silent Evolution)」。

 今月27日の「開館式」を前に、先ごろ、最後の像がクレーンとダイバーの助けを借りて所定の場所に設置された。はだかの男女もいれば、妊婦、しかめ面をしている老人、踊っている少女など、さまざまな像が、水深30メートルほどの海底に「アートの人工魚礁」を形成している。

 このプロジェクトは2年前に始動した。船のいかりやハリケーン、観光客の不注意などで損傷したサンゴ礁を保護する手立てを考えていたカンクン国立海洋公園(Cancun Marine Park)が、グレナダや英国の海底で展覧会を実施した実績を持つデカイレス・テイラー氏に白羽の矢を立てたのだ。

 この海域には年間75万人の観光客が訪れる。天然のサンゴ礁を保護する手段として、公園側は単なる人工魚礁を設置するより、「海中博物館」を作るというアイデアはずっと魅力的だと考えている。

 熱烈なダイビング愛好者でもあるデカイレス・テイラー氏は、英国からカンクン近郊に居を移し、地元の住民5人とチームを組んで、街中でモデルを探しては作品にしていった。

 作品は今後も、海の生物との相互作用で進化していく。既に、顔や手足には、ひょろ長い黄色の藻が付着し始めている。(c)AFP/Sophie Nicholson

【参考】
ジェイソン・デカイレス・テイラー氏による海中博物館のサイト(英語)
サンゴ礁守る「海中博物館」(YouTube/AFPBB News公式チャンネル)