【10月23日 AFP】世の中の父親のほとんどは2歳の娘に、家の前でまるでポニーの背中に乗るように、ビルマニシキヘビの背中に乗って遊んでほしいとは思わないだろう。

 けれど自宅前に置いた小屋で、10匹を超えるヘビを飼っているのが、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸(West Bank)のラマラ(Ramallah)に住む公務員、ジャマル・アンワシ(Jamal Amwasi)さん(35)一家だ。中には数メートルある大ヘビもいる。「このヘビたちはわが家の家族だ。毎日朝晩、面倒を見て、エサをやっているよ」

 ペットを飼うこと自体が珍しく、しかもヘビは農場を荒らす有害な生き物だと思われているヨルダン川西岸で、アンワシさんの存在は特別だ。

 今や地元で「は虫類といえばアンワシさん」というほどの「権威」だ。近所の人たちから、ヘビを駆除してほしいという依頼の電話がやって来る。行ってみて、毒ヘビだったらその場で殺し、毒をもたないヘビならば自分で飼う。

 家では子どもたちがペットのニシキヘビたちと遊んでいる。アンワシさんが留守の時、3メートルあるヘビにエサをやる係は13歳のイブラヒム君だ。「まったく怖くなんかないよ」と言う。

 2歳になるナタリーちゃんは、最初はヘビたちを怖がっていたが、今ではヘビにキスをしたり、家の前の道路で放し飼いになったヘビの背中にまたがって乗り回している。通行人はびっくりしたように足を止める。しかし、アンワシさんは「上に乗るためのサドルを作ってやろうかと思ってる」のだそうだ。

 ヘビたちのエサを切らすことなく確保できるよう、家ではニワトリ、アヒル、ウサギを飼っている。つい2週間前にはニシキヘビの1匹に子羊を食べさせたばかりだ。子羊はナタリーちゃんとそう変わらない大きさだが、アンワシさんは心配する必要はまったくないと言う。「ヘビは動物を食べる前ににおいをかぐからね。とにかく、人は食べないよ」

 しかし、ほかのヘビ専門家によると安全だとは限らない。イスラエルのナハリヤ動物園(Nahariya Zoo)と協力し長年、ヘビの収集をしているヨナタン・ブロンスキ(Yonatan Vronski)さんは、ニシキヘビは普通は従順だが、時に人を襲うこともあると言う。「(ニシキヘビは)1人で安全に扱えるヘビじゃない。子どもとヘビを二人きりにして、コーヒーでも作ろうと家の中へ入ってしまったら、お湯がわくまでに子どもが殺されてしまっていることだってありうる」

 アンワシさん自身も危ない目にあったことがある。しかし、左腕のヘビにかまれた痕は、ヘビが勘違いしただけだと言い張る。

「ヘビはわたしの手を鶏肉だと思ったんだよ」

(c)AFP/Hossam Ezzedine