【10月10日 AFP】ベトナムの首都ハノイ(Hanoi)で10日、李朝を樹立した李太祖(Ly Thai To)が1010年に遷都してから今年で1000年になることを記念する行事の一環として、近年で最大規模となる軍事パレードが行われた。

 国旗と社会主義を表す鎚と鎌を描いた旗を引いたロシア製ヘリ10機が上空を通過して始まったパレードには公式発表で約4万人が参加した。共産党幹部らはホーチミン廟の上に設けられた席から、ひざを曲げずに脚を高く上げて行進する兵士や警察官らに手を振った。

 労働者、若者、少数民族、宗教別のグループもパレードに参加し、ベトナム社会のひとつの断面を示した。ライフルを持った特殊部隊や、民族衣装を着てライフルを肩に掛けた少数民族の女性民兵、さらには獅子舞やベトナムの歴史に題材をとった山車も参加したが、重火器などの軍事を強調した展示は90分のパレードのごく一部にとどまった。

■中国にメッセージ

 今回のパレードは国家の威信を示すとともに、ベトナムと国境を接し、南シナ海(South China Sea)で領有権問題を抱える大国・中国にメッセージを送ったと研究者は指摘する。

 オーストラリアのニューサウスウェールズ大学(University of New South WalesUNSW)でベトナムを研究しているカール・セイヤー(Carl Thayer)氏は、軍事パレードは「ベトナムを攻撃すると痛い目にあうぞ」というメッセージだと言う。

 ベトナムと中国はいずれも、南シナ海の西沙(パラセル)諸島(Paracel Islands)と南沙(スプラトリー)諸島(Spratly Islands)の領有権を主張している。9月11日にも西沙諸島沖で中国がベトナム漁船を拿捕し、ベトナムは漁船とその乗組員の釈放を要求している。

 豊富な資源が埋蔵されている可能性があるこれらの島々の領有権をめぐる両国の対立は昔からのものだが、南シナ海における中国の影響力が増すにつれて、ベトナム以外の周辺国や米国も警戒を強めている。

 ベトナム軍の装備には老朽化したものが多いが、中国との間に領有紛争がくすぶる中、軍は装備の更新を進めている。前年12月にはロシアとの間で潜水艦12隻を含む大規模な兵器売買契約を結んだほか、ロシアは今年7月、ベトナムにスホイ(Sukhoi)SU-30MK2戦闘機20機を売却すると発表した。(c)AFP