【10月3日 AFP】沖縄県の尖閣諸島(Senkaku Islands、中国名:釣魚島)沖で起きた中国漁船と海上保安庁の巡視船との衝突事故後、中国から日本への輸出が滞ったレアアース(希土類)について、豊富な埋蔵量をもつオーストラリアの業界関係者が輸出に積極的な姿勢を見せ始めている。

 レアアースはハイブリッドカーから省エネ型照明器具、iPodのような最先端のデジタル家電に不可欠な資源。業界筋やアナリストらは、レアアースの埋蔵量が豊富なオーストラリアならば、2~3年で世界の生産量上位国になれるとみている。

 オーストラリアのある長期投資家は「(オーストラリアは)2014年ごろまでに、レアアース市場で支配的な供給国になれるはずだ。それに向けて中国と競争していくだろう。わが国は小さな国だがレアアース版サウジアラビアになると思う」と語る。

■埋蔵量140万トンのマウント・ウェルド鉱山

 帝京大学(Teikyo University)の谷内達(Toru Taniuchi)教授は、レアアース供給の90%を中国に頼っている状況は問題で、供給源を多様化させ、長期的なリスク管理を向上させるべきだと言う。しかし、新規参入する供給者が成功するには、売り手と買い手の双方が利益を得るよう配慮する必要があると指摘する。

 中国のさらなる輸出制限を懸念する米国はレアアースの国内生産再開に動き、薄型テレビやデジタルカメラ、スマートフォンなどを生産する日本の大手メーカーは、豪レアアース生産企業ライナス(Lynas Corporation)との取引に乗り出している。

 ライナスのマシュー・ジェームズ(Matthew James)副社長によると、同社が西オーストラリア(Western Australia)州に所有するマウント・ウェルド(Mount Weld)鉱山の埋蔵量は約140万トンに上る。

■将来的には対中輸出も

 中国では需要が急増する中、レアアースの供給は減少することが見込まれているが、ライナスでは10年以内に中国への輸出も可能だという強気の見通しを立てている。一般にレアアースの生産開始までには数年かかるが、同社は8年前から計画を進めており、中国以外の競合企業より2~4年先行しているとジェームズ氏は自信を見せる。「中国の国内埋蔵量だって限られている。産業の効率性を高めようと中国の国内需要が高まれば、中国が5~10年以内にレアアースの純輸入国に転じることもありうるとわが社では考えている」

 オーストラリアは世界のレアアース埋蔵量のうち46%を占めている。前述の投資家は、オーストラリアが注目を集めるまでそれほど時間はかからないだろうと予測する。「レアアース生産におけるオーストラリアの地位なんてことを真剣に考える人など、先週あたりまではほとんどいなかった。レアアースに関するレポートにオーストラリアが出てきても、世界の46%を占めるという意味を理解する人はいなかった。世界で最大・最良のレアアース埋蔵地として、わが国はようやく夜明けを迎えようとしている、というところだ」(c)AFP/Talek Harris