【10月3日 AFP】米国の公衆衛生局(PHS)の研究者たちが1940年代に、中米グアテマラで受刑者や精神病院の患者らを故意に性病に感染させ、新薬実験を行っていたことが明らかになり、バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領は1日、グアテマラのアルバロ・コロン(Alvaro Colom)大統領に電話をかけ、謝罪した。

 この実験については、米ウェルズリー大学(Wellesley College)のスーザン・レバビー(Susan Reverby)教授が、PHSのジョン・カトラー(John Cutler)医官(故人)が1946~48年にかけて行った実験に関する未公開資料を今年になって発見し、明らかになった。

 カトラー医官とその研究チームは、当時まだ新薬だったペニシリンの性病予防に対する効果を試すため、精神病患者を含むグアテマラの男性約1500人を、わざと性病に感染させた。

■被験者に知らせず実験

 実験の資金は、米国立衛生研究所(National Institutes of HealthNIH)が提供していた。NIHのフランシス・コリンズ(Francis Collin)所長は、この実験の非倫理性を説明するひとつとして、「被験者たちからインフォームド・コンセント(治療内容を十分に説明した上で同意を得ること)を得ていた証拠はまったくなく、それどころか、被験者たちは自分たちがされていることについて騙されてさえいた」と語った。

 実験を仕切っていたカトラー医師は、同じく悪名高い「タスキジー実験(Tuskegee experiment)」にも関わっていた医師として知られる。タスキジー実験は米国で1932~72年の40年間にわたり、梅毒患者である数百人の黒人男性に、梅毒であることを告げずに治療しないで経過を観察した実験である。

 グアテマラの実験では始めに、売春婦たちを淋病か梅毒に感染させ、兵士や精神病院の患者たちと無防備な性交渉をさせた。発見された資料によると、この方法で感染する男性が少なく、実験方法は兵士や受刑者、精神病患者らへの直接接種に切り替えられた。実験中に少なくとも1人が死亡したが、実験が死因かどうかは明らかになっていない。

 今後、米医学研究所(US Institute of Medicine)の指揮下で独立した専門家らが事実調査を行っていくほか、オバマ政権の生命倫理問題研究に関する大統領諮問委員会(Presidential Commission for the Study of Bioethical Issues)は世界各地の専門家を招き、医療研究を取り巻く倫理基準について再検討する会議を開く予定だ。(c)AFP/Karin Zeitvogel