【9月10日 AFP】米海軍の無人ヘリが8月2日に一時操縦不能となり、首都ワシントンD.C.(Washington D.C.)に接近したため、米軍が撃墜も検討していたことが明らかになった。北米航空宇宙防衛司令部(North American Aerospace Defense CommandNORAD)と米北方軍の司令官を兼任する米領空防衛の責任者、ジェームズ・ウィニフェルド(James Winnefeld)海軍大将が9日、記者団に語った。

 米メリーランド(Maryland)州のパタクセント・リバー(Patuxent River)海軍航空基地のウェブスター・フィールド(Webster Field)飛行場から離陸した米海軍の無人ヘリ「MQ-8Bファイアスカウト(MQ-8B Fire Scout)」が飛行中に地上との通信がとれなくなって進路を外れ、ワシントンD.C.の飛行制限区域に向かった。米海軍によると、首都から64キロの距離まで接近した。

 無人ヘリは、NORADがヘリ迎撃のためF16戦闘機をスクランブル発進させる直前になって、コントロールが復旧した。ヘリが操縦不能になってから再び操縦可能になるまでに20分かかった。

 ウィニフェルド司令官は9日、この出来事が米軍司令官らに前例の無いジレンマをもたらしたと語り、「この問題を注意深く調べている」と述べた。ヘリ撃墜の「寸前まで行ったというわけではない」ものの、指揮官らが選択肢のひとつとして検討したという。

■米領空の無人機活用の是非

 米軍は、米領空での無人機飛行の規制緩和を米連邦航空局(Federal Aviation AdministrationFAA)に求めてきたが、ウィニフェルド司令官は、今回の事例は米領空を飛ぶ無人機に対する国民の不安感を高めるだろうと述べた。

 FAAは、無人航空機のセンサーが周囲の航空機を探知して回避する十分な能力があることを示すよう求めてきた。

 ウィニフェルド司令官は、「米領空における航空機の安全な飛行を目指すという点ではFAAと同じ立場だ」と述べた上で、無人機は防災用途などへの要望が高まっており、安全性に対する懸念を解決するために迅速に行動することが重要だと付け加えた。(c)AFP