【8月20日 AFP】アリ・カシム(Ali Kassim)さん(32)は、自分の田んぼで、雑草を1本ずつ引き抜いている。彼が栽培しているのは、アジア米に押されて一時絶滅しそうになった「アフリカ米」だ。

 ここ西アフリカのトーゴ中部アタパメ(Atakpamey)地域では、現在、カシムさんを含めて約100人の農家が、隣国ベナンに本部を置く「アフリカ・ライス・センター(Africa Rice Centre)」による実験プログラムに参加している。農家は、報酬を受ける代わりに、センターから受け取った稲の種を自分の田んぼで栽培する。

 実験の目的は、アフリカ原産の稲(オリザ・グラベリマ)を再導入することにより、アフリカ大陸の農業習慣を変え、食糧危機の規模を小さくすることだ。

■アジア米流入で激減

 アフリカ米は約3500年前から栽培されてきたが、高収量のアジア原産稲(オリザ・サティバ)が伝来すると、農家はアジア米の栽培の方を好むようになった、約450年前からアジア米が輸入されてきたこともあり、アフリカ米は絶滅寸前となった。

 だが、栄養価はアフリカ米の方が高い。そのためアフリカ・ライス・センターは、大陸全体での収量アップにつながる高収量の品種を開発中なのだ。

 プログラムの責任者は、高収量の品種は、アジア種に勝てるだけでなく、アフリカの食糧自給率の増加にもつながることを強調する。普及すれば、飢饉(ききん)にも対処できる可能性があるという。

■援助と輸入に依存

 アフリカでは、急増するコメの需要に対し、生産が全く追いついていない。同センターの報告書によると、アフリカ諸国は2008年、コメの消費量の40%を輸入した。額にすると約36億ドル(約3100億円)だ。 

 コメを輸入に依存しているために、2008年の世界的な食糧危機のような場合に弱さを露呈する。なお、「2008年から09年にかけて、多くの国々では穀物生産高が大幅に増えたのに、アフリカは相も変わらず主食のコメとトウモロコシを食糧援助と世界の穀物市場に依存し続けていた」という証言もある。

 現在実験されているのは、アフリカ由来の遺伝子を2つかけ合わせた新種だ。実が熟すと稲穂が倒れたり、実が落ちてしまうといったアフリカ米の問題も解決していきたいという。(c)AFP/Fiacre Vidjingninou