【8月12日 AFP】イスラム教の聖地、サウジアラビアのメッカ(Mecca)に建設中の超高層タワーでまもなく、イスラム教徒待望の「メッカ標準時」を世界最大の時計が刻み始める。

「メッカ・ロイヤル・クロック・タワー(Mecca Royal Clock Tower)」から聖モスク(Haram Grand Mosque)を見下ろす四面の巨大時計は、イスラム教の断食月「ラマダン(Ramadan)」が始まる12日前後に動き始める。3か月の試用期間を経て正式に運用を開始する予定だ。独自の標準時を表す時計としてイスラム世界の期待は高い。

 2008年にカタールのドーハ(Doha)で開かれたイスラム聖職者らの会議で、「メッカ標準時こそが世界の真の標準時子午線である」という「科学的な」主張が提起された。メッカこそが世界の中心であり、グリニッジ標準時(Greenwich Mean TimeGMT)に起源を持つ現在の協定世界時(Universal Time, CoordinatedUTC)は、英国のグリニッジ天文台を通る子午線を世界の標準時の基準とすると決められた1884年に欧米諸国に押し付けられたものだという議論が盛り上がった。

 国営サウジ通信(SPA)によると、タワー自体の高さは601メートルで、アラブ首長国連邦ドバイ(Dubai)の超高層ビル「ブルジュ・ハリファ(Burj Khalifa)」に次いで世界で2番目となる。

■文字盤直径は英ビッグベンの6倍以上

 高さ400メートル付近に設置された巨大時計はドイツ製で、一面が46メートル四方。文字盤の直径は「ビッグベン(Big Ben)」の愛称で知られる英国会議事堂の時計の6倍以上で「世界最大の時計」をうたう。

 時計の下に巨大なアラビア文字で刻まれた「アラーの名において」という言葉を200万個のLEDが照らし出す。時計最上部には2万1000個の白色と緑色のライトがあり、点滅して半径30キロ圏内に1日5回のイスラム教の礼拝時刻を知らせることになっている。

 あるイスラム教徒の住民は、「われわれメッカに住む人間が望んでいるのは、メッカが世界の時間帯の中心になること。ただ眺めたり、自慢の種にするための時計が欲しいのではない」と語った。

 デベロッパーが全容をひた隠しにして建設を進めてきた巨大時計だが、交差する剣と緑色ヤシの木というサウジアラビアの国章に飾られ、始動の瞬間を待っている。(c)AFP