【7月23日 AFP】外国人研修生問題弁護士連絡会(Lawyers' Network for Trainees)事務局長の安孫子理良(Lila Abiko)弁護士は22日、外国人技能実習・研修制度で来日し過労死したと思われる実習生が数十人に上ると訴え、同制度は「人身売買の一種」だと強く非難した。

 日本政府は非熟練労働者の入国をほとんど認めないが、バブル崩壊後の1993年に開始した外国人研修制度の下、技能研修の名目で、低賃金で働く何万人もの外国人研修生を受け入れてきた。多くは中国、インドネシア、フィリピンなどからの研修生だ。

 日本外国特派員協会(Foreign Correspondents' Club of JapanFCCJ)で記者会見した安孫子弁護士は、研修制度は発展途上国出身の研修生への技術移転を通じた国際貢献を目的に掲げているが、実態とは大きな差があると指摘し、「制度は安い労働力を提供するシステムにすぎない」と糾弾した。

 同制度をめぐっては訓練生の虐待などが取りざたされているが、安孫子弁護士によると、2008年度だけで過去最高の35人のアジア人研修生が死亡した。同制度を監督する国際研修協力機構(Japan International Training Cooperation OrganizationJITCO)による前年の発表では、この35人のうち16人が脳・心臓疾患、5人が労務事故で死亡、1人が自殺となっている。

 安孫子弁護士はまた、翌09年度に死亡した研修生は27人で、脳・心臓疾患が9人、自殺者は3人だったと説明した。

■外国人実習生の過労死に7月、初の労災認定

 労働基準監督署はこの7月に初めて、同制度による外国人実習生を過労死として労災認定する方針を固めた。

 対象となるのは、中国人実習生として茨城県の金属加工会社で勤務していた中国江蘇(Jiangsu)省出身の蒋暁東(Jiang Xiao Dong)さん(当時31)が08年6月に心不全で死亡した件。死亡する前月の残業時間は100時間を超えていた。また遺族代理人である安孫子弁護士によると、07年11月のタイムカードには1か月の勤務時間が350時間と記録されていた。

■闇ブローカー介在、返済のため過労に

 同弁護士いわく、外国人実習生の多くは研修制度への登録手続きと日本への渡航準備を本国の闇ブローカーに依頼し、数年分の賃金にも匹敵する法外な手数料を支払っている。こうした手数料によって実習生たちは喉頸(のどくび)を押さえられた状態にあり、「これは一種の人身売買だと思う」と同弁護士は激しく非難した。

 ともに会見した中国人研修生の李青智(Li Quing Zhi)さん(34)は、07年に日本料理を学ぶため来日したが、実際はある建具製造会社で最低賃金で雑用をさせられたと証言した。1か月間、150時間分の残業代未払いで働いた後、繰り返し抗議すると解雇され、行き場を失った。中国に妻と2人の子どもを残してきた李さんは「当然の支払いを受けずには中国へ帰国できない」と訴えた。

 国連人権理事会(UN Human Rights Council)のホルヘ・ブスタマンテ(Jorge Bustamante)特別報告者(移民人権問題担当)は4月、日本の外国人技能実習制度について警告を発している。(c)AFP/Harumi Ozawa


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