【7月13日 AFP】ある朝、ニュージーランドの女性が目覚めると、自分が話す言葉がイギリスの地方訛(なま)りになっていた――。13日の地元紙サウスランド・タイムズ(Southland Times)が伝えた。

 この女性は、ニュージーランド南部インバーカーギル(Invercargill)に住む多発性硬化症患者のブランウィン・フォックス(Bronwyn Fox)さん。ある朝、目覚めてみると、英国のスコットランドやウェールズ、ロンドン北部各地の訛りが混ざった英語を話していることに気付いた。フォックスさんは祖父母の代からニュージーランドに住んでおり、英国を訪れたことは一度もない。

 病院へ行きMRI(磁気共鳴画像装置)検査を行ったところ、後頭部の脳に損傷の形跡が2か所認められた。医師は、この損傷がフォックスさんの訛りの原因である可能性が高いと診断したが、それ以上はどうすることもできないという。

 フォックスさんが、その後はじめて友人に電話をかけたときには、いたずら電話と思われて切られてしまったという。

■「外国語様アクセント症候群」という病気

 また、どこから来たのかと聞かれて出身地の「ウィントン(Winton、ニュージーランドの街)」と答えると、「いや、そうではなくて、元々はどこの国の出身なの?」と言われてしまったという。フォックスさんは、「訛りが脳の損傷のせいだとは誰も思いつきもしないようです」と、やはりイギリス風の発音で同紙のインタビューに答えた。

 だが、フォックスさんの夫のレックス(Rex)さんはさほど気にしていない。「結構、楽しませてもらっているよ。平凡な日常がちょっと明るくなったね」

 フォックスさんを悩ませる「外国語様アクセント症候群(Foreign Accent SyndromeFAS)」は、脳の言語をつかさどる部分での損傷が原因と考えられている。だが、1907年に最初の症例が記録されて以来、これまでに公式に確認された患者は少ない。

 その少ない症例としては、脳卒中の後にフランス訛りの英語を話すようになったイギリス人女性、頭部に被弾した後にドイツ訛りになったノルウェー人女性などの例があり、今年になってからも、片頭痛の後、英語が中国語訛りになったイギリス人女性の例が報告されている。(c)AFP

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